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雇用契約書や労働条件通知書に何を書くか。キャストやスタッフを雇うときの労働条件の明示

面接で時給と歩合を口で伝えて、そのまま体入、翌週から本入店。この流れのどこかで、条件を書いた紙を渡しているでしょうか。雇用契約で働いてもらうなら、労働基準法は契約のときに労働条件を明示するよう求めていて、一部は書面で渡す決まりです。何を、どの形で渡すのかを条文で確認します。

編集部(水商売経営学)公開 2026年9月24日更新 2026年9月24日14分で読めます
開店前の客席のテーブルで、2枚の書類を相手に向けて差し出す手元と、手を組んで聞く相手の手元

この記事の要点

  • 雇用契約で働く人には、契約のときに労働条件を明示する(労働基準法第15条第1項)。契約期間、就業の場所と業務、始業・終業の時刻や休日、賃金の決め方と支払い、退職の事項は、書面で渡すのが原則。本人が希望すれば、出力できるメールやLINEなどのメッセージでもよい
  • 2024年4月から、就業の場所と業務の変更の範囲、有期契約の更新上限、無期転換を申し込める機会と転換後の労働条件が、明示する事項に加わった。パートや有期で雇う人には、昇給・退職手当・賞与の有無と相談窓口も文書などで示す
  • 明示された条件が事実と違えば、労働者はすぐに契約を解除できる。明示しなかった場合は30万円以下の罰金(労働基準法第120条)。業務委託のキャストに当てはまるかは契約の実態で変わる

時給はいくら、ドリンクは1杯いくらバック、送りは出る。面接でそう話して、翌週から本入店。条件を書いた紙は後回し、という流れになっていないでしょうか。

雇用契約で働いてもらう人には、労働基準法が契約のときに労働条件を明示するよう求めています。一部の事項は書面で渡す決まりで、2024年4月には書く事項が増えました。何を、どの形で渡すのか。水商売の給料の組み方だと、どの欄が抜けやすいのか。条文と厚生労働省の資料で確認します。

雇い入れの契約を結ぶときに、労働条件を明示する

決まりの元は、労働基準法第15条第1項です。

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

労働基準法 第15条第1項

明示するのは「労働契約の締結に際し」です。本入店の日ではなく、雇うと決めて契約を結ぶときに渡します。

条文が求めているのは明示で、書類の名前は決まっていません。店から一方的に渡すものを労働条件通知書、店と本人が署名するものを雇用契約書と呼ぶことが多いですが、決められた事項が書いてあれば、どちらの形でも明示になります。労働契約法第4条第2項は、店と働く人が契約の内容をできる限り書面で確認するよう求めています。本人の署名が残る雇用契約書の形にしておくと、あとで「聞いていない」と言われたときに見せられます。

業務委託のキャストには、そのまま当てはまるとは限りません

労働基準法第15条の明示は、雇用されている人(労働者)に対する決まりです。業務委託の契約で働いてもらっているキャストには、この義務がそのまま当てはまるとは限りません。ただし、契約書が業務委託でも、働き方の実態から労働者にあたると判断されることがあります。契約書の中身が実態と合っているかは、社会保険労務士に確認してください。

必ず書面で渡す項目と、店に定めがある場合に伝える項目

明示する事項は、労働基準法施行規則第5条第1項に並んでいます。そのうち、書面で渡さなければならないのは、第1号から第4号の事項です。第3号のうち昇給だけは、書面でなくてもかまいません(同条第3項・第4項)。

区分事項(施行規則第5条第1項)渡し方
必ず明示する契約期間(第1号)、有期契約を更新する場合の基準と更新上限(第1号の2)、就業の場所と業務とその変更の範囲(第1号の3)、始業・終業の時刻、所定時間外の労働の有無、休憩、休日、休暇(第2号)、賃金の決め方・計算・支払いの方法、締切日と支払日(第3号)、退職と解雇の事由(第4号)書面が原則(昇給は除く)
必ず明示する昇給(第3号)口頭でもよい
店が定めているなら明示する退職手当(第4号の2)、臨時の賃金・賞与など(第5号)、働く人に負担させる食費・作業用品など(第6号)、安全衛生(第7号)、職業訓練(第8号)、災害補償(第9号)、表彰と制裁(第10号)、休職(第11号)口頭でもよい

第1号の2は、契約期間を決めて雇い、更新する場合がある契約のときだけの事項です。第4号の2から第11号は、店がその定めをしていなければ明示しなくてかまいません(同条第1項ただし書)。逆に言えば、遅刻などへの制裁のルールや、本人に負担させる費用を決めているなら、それは伝える事項です。

厚生労働省は、この表の事項を埋める形のモデル労働条件通知書を公開しています。一から作るより、これを店の条件に合わせて埋めるほうが漏れが出にくくなります。

2024年4月から明示事項に追加された4つの項目

2024年4月1日に施行規則の改正が施行され、明示する事項が増えました。厚生労働省の資料は、次の4つにまとめています。

追加された事項誰にいつ
就業の場所と業務の変更の範囲雇うすべての人契約を結ぶとき、有期契約を更新するとき
更新上限(通算の契約期間か更新回数の上限)の有無と内容期間を決めて雇う人契約を結ぶとき、更新するとき
無期転換を申し込める機会無期転換を申し込める権利が生じる人その権利が生じる契約の更新のとき
無期転換後の労働条件同上同上

変更の範囲とは、将来の配置転換などで変わりうる就業の場所と業務の範囲です。系列の別の店へ異動してもらうことがあるなら、雇い入れ直後の店名だけでなく、その範囲も書きます。厚生労働省の通達は、臨時的な応援のように一時的に働く場所が変わる先は、この範囲に含まれないとしています。系列店へのヘルプの扱いは系列店へのヘルプに何が必要かにまとめました。厚生労働省のQ&Aは、ここでいう変更の範囲は、その契約期間中の範囲を指すとしています。

無期転換は、労働契約法第18条の決まりです。同じ店と結んだ有期契約の期間を通算して5年を超える人が申し込めば、期間の定めのない契約に変わります。更新上限を後から新しく設けるか短くするときは、その理由をあらかじめ説明することも必要になりました(厚生労働省の資料では、雇止めに関する基準の改正として説明されています)。

厚生労働省のQ&Aは、すでに雇っている人に、新しいルールで改めて明示する必要はないとしています。ただし、有期契約の更新は新しい契約を結ぶことにあたるので、2024年4月1日以降の更新では新しいルールに沿った明示が要ります。

労働条件通知書はLINEやメールで送ってもよいか

書面の交付に代えて、ファクシミリ、電子メールその他の方法で明示することもできます。条件は2つです。働く人がその方法を希望したこと。そして、送った記録を本人が出力して書面にできることです(施行規則第5条第4項)。

労働契約の締結時に明示を怠ったり、労働者が希望していないにもかかわらず、電子メール等のみで明示したりすることは、労働基準関係法令の違反となります。

厚生労働省「平成31年4月から、労働条件の明示がFAX・メール・SNS等でもできるようになります」

このリーフレットは、認められる例として、FAX、Eメール、Webメールサービスに加えて、LINEやメッセンジャー等のSNSのメッセージ機能を挙げています。そのうえで、印刷や保存がしやすいよう添付ファイルで送ること、本当に届いたかを本人に確かめること、なるべく出力して保存するよう伝えることを勧めています。SMSは禁止ではないものの、ファイルを添付できず文字数の制限もあるため、望ましくないとしています。

店のLINEでやり取りしている人に送るなら、トーク画面に条件を細切れに打つのではなく、通知書のPDFを1つ添付する形にします。「LINEで受け取りたい」という本人の返事も、そのまま残しておきます。

パートやアルバイトには、追加で4つの項目を文書で示す

週の所定労働時間が正社員より短い人(短時間労働者)や、期間を決めて雇う人(有期雇用労働者)には、パート・有期雇用労働法第6条第1項の明示も加わります。雇い入れたら速やかに、次の事項を文書の交付などで示します(同法施行規則第2条第1項)。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 雇用管理の改善などに関する相談窓口

労働基準法では口頭でよかった昇給も、パートやアルバイトには文書で「有・無」を示すことになります。本人が希望すれば、ファクシミリやメールなどの方法でもかまいません(同条第3項)。

2026年10月1日からは、この一覧に「法第十四条第二項の規定による説明を求めることができる旨」が加わります。同法第14条第2項は、正社員との待遇の違いの内容と理由などを、本人から求められたら説明する決まりです。10月以降に雇う人の通知書には、この一文と相談窓口の両方を入れておきます。

歩合やペナルティなど、水商売ならではの決めごとはどの欄に書くか

時給に歩合やドリンクバックを組み合わせ、日払いで渡し、ドレスや送りの費用の決まりもある。そうした店の決めごとが通知書のどの欄にあたるかを整理すると、次のようになります。

店の決めごと書く欄根拠
時給、指名や同伴の歩合、ドリンクバックの計算の仕方賃金の決め方・計算の方法施行規則第5条第1項第3号
深夜の割増の率賃金(割増賃金率)同号、労働基準法第37条第4項
日払いか月払いか、締切日と支払日、天引きの有無賃金の支払いの方法・時期同号
ドレス、ヘアメイク、送りの費用を本人に負担させる働く人に負担させるもの同項第6号
遅刻や当日欠勤のペナルティ表彰と制裁同項第10号
シフトの決め方、始業・終業の時刻始業・終業の時刻、休日同項第2号
系列店への異動(一時的なヘルプは除く)就業の場所の変更の範囲同項第1号の3

労働基準法の賃金は、名称を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものです(同法第11条)。毎回の給料で払う歩合やドリンクバックも、その計算の仕方は書面で渡す賃金の事項に入ります。 「1杯あたり何円」「何本目から」のように、本人が自分で計算できる書き方にします。モデル労働条件通知書にも、時間給と並んで出来高給の欄があります。

深夜の割増は、午後10時から午前5時の労働に25%以上です。モデル労働条件通知書には「深夜( )%」の欄があります。計算の仕方は深夜手当はいくら払うのかにまとめました。日払いの払い方や、ドレス代・寮費の天引きに要る協定、罰金を決めておく契約の禁止は日払い・前借り・罰金の天引きで確認できます。遅刻の罰金額を先に決めて通知書に書いても、労働基準法第16条の禁止は外れません。送り代を給料から引くときに先にそろえることは、キャストを送る車の事故と送り代にまとめています。

始業と終業を「シフトによる」とだけ書くのでは足りない、という厚生労働省の考え方はシフトを集める・催促する・配る手順で紹介しています。減給のルールを置く場所としての就業規則は就業規則と36協定は何人から必要かを見てください。

実際の条件と違った場合の即時解除と、明示しなかったときの罰則

明示した条件と実際の条件が違ったときのことも、第15条に書かれています。

前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

労働基準法 第15条第2項・第3項

通知書に書いた時給やバックの率が、実際の給料と違っていれば、働く人は予告なしに契約を解除できます。寮に入るために引っ越してきた人が、解除から14日以内に帰郷するなら、その旅費は店の負担です。施行規則第5条第2項も、明示する労働条件を事実と異なるものにしてはならないと定めています。

「入店のときだけ高い条件を書いておく」は、この条文で店に返ってきます。条件を変えるなら、通知書を作り直して本人と確かめます。

労働基準法第15条第1項(明示)と第3項(帰郷旅費)に違反すると、30万円以下の罰金です(同法第120条第1号)。パート・有期雇用労働法第6条第1項の文書での明示をしなかった場合は、10万円以下の過料です(同法第31条)。

求人票に載せた募集条件と、契約時の労働条件をそろえる

求人を出す段階にも、別の決まりがあります。職業安定法第5条の3は、労働者を募集する人に、応募する人へ業務の内容と賃金、労働時間などの労働条件を示すよう求めています。求人票や求人サイトの条件は、こちらの決まりです。

募集のときに示した条件を契約のときに変えるなら、変える内容を示す必要があります(同条第3項)。求人に書いた時給と、通知書の時給がずれないようにしておきます。募集から初日までの流れは体入初日の受け入れに、面接での質問の決め方は面接で聞いてはいけないことにまとめています。

通知書のひな形を店で1つ決めておき、雇うたびに同じ欄を埋める運用にしておくと、店長ごとに説明が変わることを防げます。自分の店の給料の組み方がどの欄にあたるか迷うときは、労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。

今日できる確認

  • 雇っているキャストやスタッフ全員に、労働条件を書いた書面(本人が希望した場合はメールやLINEの添付ファイル)を渡しているか
  • 歩合やドリンクバックの計算の仕方、深夜の割増の率が、通知書に書いてあるか
  • 2024年4月以降の契約と更新で、就業の場所と業務の変更の範囲、有期なら更新上限を書いているか
  • パートやアルバイトの通知書に、昇給・退職手当・賞与の有無と相談窓口があるか。2026年10月以降の分に、待遇の説明を求められる旨を入れたか
  • 求人に書いた条件と、通知書の条件が一致しているか

出典

※2026年9月24日に上記資料を確認しました。自分の店の給料の組み方を通知書のどこに書くか、業務委託で働く人が労働者にあたるかは、労働基準監督署か社会保険労務士へ確認してください。

※2026年9月24日、系列店へのヘルプについての記述を、厚生労働省の通達に合わせて修正しました。一時的なヘルプ先は、就業の場所の変更の範囲に含まれません。

編集部(水商売経営学)

水商売経営学の編集部です。実際に店を回してきた人間と、業界の外から入った編集者で書いています。法律・税務の記事は公的資料を出典として明示します。制度の説明は出典を示して公開し、許可・届出の要否や条文の解釈など「うちの店の場合はどうか」に踏み込む記事は、行政書士・税理士の確認が取れるまで公開しません。取材した店の話は、聞いた範囲のことだけを書きます。個別の判断は店の状況によって変わるため、迷う表現は確認したうえで進めてください。

この記事は2026年9月24日に更新しました。

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