
この記事の要点
- 雇用契約で働く人には、労働時間が6時間を超えれば45分以上、8時間を超えれば1時間以上の休憩を、労働時間の途中に与える。休憩は自由に使わせる(労働基準法第34条)。飲食店や接客業にあたる店は、全員一斉に休憩を与えなくてよい(施行規則第31条)
- 客が来たらすぐ席に着くよう求められて待っている時間(手待時間)は、休憩ではなく労働時間。店の指示で閉店後に店内を片付ける時間も労働時間として扱う(厚生労働省のガイドライン)
- 休日は毎週1回以上か、4週間で4日以上(第35条)。この休日に働いてもらうには36協定が要り、35%以上の割増賃金を払う。前もって休日を入れ替える振替休日なら休日労働にならないが、後から休ませる代休では割増が必要
営業中、客が来ないまま1時間が過ぎる日があります。その時間を「休憩」と呼んで、給料の計算から外している店はないでしょうか。人手が足りない週に、休みの日のキャストを呼び出すこともあるはずです。
雇用契約で働くキャストやスタッフには、労働基準法の休憩と休日の決まりが適用されます。この記事では、休憩の長さと与え方、客待ちや閉店後の片付けの扱い、休日の日数、休日出勤と振替休日・代休の違いを、条文と厚生労働省の資料で確認します。業務委託のキャストに当てはまるかは、契約の形ではなく働き方の実態で変わります。
労働時間が6時間を超えたら45分、8時間を超えたら1時間の休憩が必要
休憩の決まりは、労働基準法第34条にあります。
使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。 (中略) 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
労働基準法 第34条第1項・第3項
基準になるのは、店にいる時間ではなく、休憩を除いた労働時間です。6時間ちょうどなら休憩の義務はなく、6時間を1分でも超えれば45分以上になります。休憩は「労働時間の途中」に与えるので、出勤直後や退勤の直前にまとめて付けることはできません。
営業時間が6〜8時間の店は、シフトの長さが休憩の境目の近くになります。
| 店にいる時間(休憩を含む) | 休憩 | 労働時間 | 条文上の休憩の下限 |
|---|---|---|---|
| 午後8時〜午前2時(6時間) | なし | 6時間 | なし(6時間を超えていない) |
| 午後7時〜午前2時(7時間) | 45分 | 6時間15分 | 45分(満たしている) |
| 午後6時〜午前3時(9時間) | 45分 | 8時間15分 | 1時間(15分足りない) |
最後の行のように、休憩を45分で固定していると、店にいる時間が長くなった日に8時間を超えて1時間が必要になります。延長が出やすい店は、長い日の休憩を1時間にしておくと数え直しが要りません。
水商売の店は、労使協定を結ばなくても交代で休憩を取れる
第34条第2項は、休憩を一斉に与えるのが原則だとしています。一斉にしないなら、労働者の過半数を代表する人などと書面の協定を結ぶ必要があります。ただし、第40条にもとづく施行規則で、この原則が外れる業種が決まっています。
法別表第一第四号、第八号、第九号、第十号、第十一号、第十三号及び第十四号に掲げる事業並びに官公署の事業(同表に掲げる事業を除く。)については、法第三十四条第二項の規定は、適用しない。
労働基準法施行規則 第31条
労働基準法の別表第一第14号は「旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業」です。キャバクラやラウンジ、スナック、バーのような接客や飲食の店がこれにあたれば、協定を結ばなくても、キャストやスタッフが交代で休憩を取れます。
一方で、休憩そのものを与えなくてよいという特例は、飲食店や接客業にはありません。施行規則第32条で休憩を与えないことができるのは、長距離の乗務員や一部の郵便の業務などです。第33条で自由利用の決まりが外れるのも、警察官や消防吏員、児童福祉施設の職員などに限られます。水商売の店では、休憩の長さと自由利用の決まりはそのまま当てはまります。
客が来たら接客に入る「客待ち」の時間は、休憩ではなく労働時間になりうる
休憩は、働く人が自由に使える時間です。客が来たらすぐ席に着くよう言われて店内で待っている時間は、この条件を満たしません。厚生労働省のガイドラインは、次のように書いています。
そのため、次のアからウのような時間は、労働時間として扱わなければならないこと。 (中略) ア 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間 イ 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」) (後略)
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
客待ちの時間を休憩として扱えるのは、その間は接客に呼び出さず、働く人が仕事から離れられる場合に限られます。 客がいないから休憩、客が来たら接客、という扱いは、ガイドラインのいう手待時間にあたります。休憩は時刻を決めてシフトに書き、その時間は接客に入れないようにします。
閉店後の片付けも同じです。店の指示で店内の清掃や片付けをしている時間は、ガイドラインのアに挙がっています。レジを締めたあと、タイムカードを押してから片付けをさせていれば、その時間の賃金が払われていないことになります。店の指示で、着ることが決まっている衣装に店内で着替える時間も、アの例に含まれています。
同伴やアフターは、店の外で客と過ごす時間です。これが労働時間にあたるかは、一律には決まりません。ガイドラインは、労働時間かどうかを、契約や就業規則の定めではなく、店から義務づけられていたか、そうせざるを得なかったかといった状況から個別に判断するとしています。同伴を出勤の条件にしている、回数の決まりがあるといった店は、自分の店の扱いを労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。
休日は毎週1回か4週で4日。日付をまたぐシフトにも注意
休日の決まりは、第35条です。使用者は毎週少なくとも1回の休日を与えます。4週間を通じて4日以上の休日を与える場合は、毎週1回でなくても構いません(同条第2項)。何曜日を休日にするかは、法律では決まっていません。
週6日入るキャストは、毎週1日の休みがあれば休日の決まりは満たします。ただ、労働時間の上限は別の話です。休憩を除いて1日7時間を週6日なら週42時間で、週40時間の店では2時間が時間外労働になります。常時10人未満の接客娯楽業などは週44時間までの特例があります。上限と36協定の関係は就業規則と36協定の記事にまとめました。
4週4日の形(変形休日制)にするなら、どの日から4週間を数えるかを決めておきます。施行規則第12条の2第2項は、就業規則その他これに準ずるもので、4週間の起算日を明らかにするよう求めています。起算日がないと、どの4週間で4日を数えるのかが決まりません。
夜の店で気をつけたいのは、休日が暦日で数えられることです。厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、休日は原則として午前0時から午後12時までの継続24時間で与えるとしています。1日のうち一部でも働かせれば、その日は休日を与えたことにならないとも書いています。休みの日の前夜のシフトが午前0時を過ぎて続いていないか、シフト表で確かめておきます。
法定休日に出勤してもらうには、36協定の届出と35%以上の割増賃金がいる
第35条の休日に働いてもらうことを、休日労働といいます。休日労働をさせるには、労働者の過半数を代表する人などと36協定を結び、労働基準監督署に届け出ます(第36条第1項)。人数に関係なく必要です。
休日労働の賃金は、通常の賃金の35%以上を上乗せします。第37条第1項の率を定める政令が、休日の労働について3割5分としています。時給1,500円なら、休日の1時間は2,025円以上です。休日の労働が午後10時から午前5時にかかれば、その時間は60%以上になります(施行規則第20条第2項)。深夜の割増の計算は深夜手当の記事で詳しく扱っています。
週に2日の休みを設けている場合、35%がかかるのは第35条の休日にあたる日の労働です。店が決めたもう1日の休みに出てもらった分は、週の労働時間が上限を超えれば時間外労働の25%以上の割増になります。どちらの休みを第35条の休日とするかは、就業規則などで決めておくと計算で迷いません。
前もって日を入れ替える「振替休日」と、あとで休みを与える「代休」の違い
休みの日に出てもらって、別の日に休ませる。この形には、振替休日と代休の2つがあり、割増の扱いが違います。
| 振替休日 | 代休 | |
|---|---|---|
| いつ決めるか | 前もって休日と労働日を入れ替える | 休日に働いてもらった後で、休みを与える |
| もとの休日に働いた日 | 休日労働にならない | 休日労働になる |
| 休日労働の割増(35%以上) | 不要 | 必要 |
| 注意点 | 入れ替えで週の労働時間が上限を超えれば、時間外労働の割増が要る | 後で休ませても、休日労働が帳消しにはならない |
厚生労働省の「スタートアップ労働条件」は、振替休日の条件として4つを挙げています。就業規則に振替休日の規定を置くこと、振替休日を特定すること、週1日か4週4日の休日が確保される範囲にすること、事前に通知することです。休日に働いてもらった後で「代わりに来週休んで」と決めるのは、前もって入れ替えていないので代休です。就業規則に振替の規定がない店も、振替休日の条件を満たしません。
休憩と休日の取り決めは、労働条件通知書と就業規則に書く
休憩時間と休日は、労働条件として書面で示すものです。雇い入れのときに渡す労働条件通知書には、始業と終業の時刻、休憩時間、休日を書きます(施行規則第5条第1項第2号・第3項・第4項)。書き方は労働条件の明示の記事で確認できます。常時10人以上の店では、就業規則にも必ず書く事項です(第89条第1号)。
休日とは別に、有給休暇の決まりもあります。日数や取得の義務は有給休暇の記事にまとめました。深夜のシフトに続けて入る人の健康診断の周期は、健康診断の記事で確認できます。
店長が管理監督者にあたる場合は、第41条第2号により休憩と休日の規定が適用されません。ただし、肩書だけで管理監督者になるわけではありません。判断の考え方は深夜手当の記事で触れています。
休憩が決まった時刻に取れているか、休日に出た日がないかは、出退勤の記録がないと確かめられません。記録の残し方は当日欠勤と遅刻の記録の記事に、シフトの集め方はシフトを集める手順の記事にあります。シフトと勤怠を記録して、休憩や休日の不足を自動で数えるツールもあります。
違反したときの罰則と、業務委託のキャストの扱い
第34条の休憩、第35条の休日の決まりに違反すると、6月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金です(第119条第1号)。第37条の割増賃金を払わない場合も、同じ号に入っています。
業務委託の契約で働くキャストには、原則としてこの話は当てはまりません。労働基準法の休憩と休日は、同法第9条の労働者に適用されるものだからです。ただし厚生労働省は、労働者にあたるかを、契約の形式や名称にかかわらず、契約の内容や働き方の実態から判断するとしています。出勤の時刻を店が決めている、待機を指示している、といった実態がある場合は、社会保険労務士に確認してください。
今日できる確認
- 労働時間が6時間を超える人に45分以上、8時間を超える人に1時間以上の休憩を、シフトの途中で取らせているか
- 客待ちの時間を休憩として給料から外していないか。休憩の時刻を決めて、その間は呼び出していないか
- 閉店後の片付けや着替えを、タイムカードを押した後にさせていないか
- 全員に毎週1回(または4週4日)の休日があるか。休みの日の前夜のシフトが午前0時を過ぎていないか
- 休日に出てもらった日を、振替休日と代休のどちらで扱ったかを記録し、代休なら35%以上の割増を払っているか
出典
- 労働基準法(e-Gov法令検索。第9条が労働者の定義、第32条が労働時間、第34条が休憩、第35条が休日、第36条が36協定、第37条が割増賃金、第40条が労働時間・休憩の特例、第41条が適用除外、第89条が就業規則、第119条が罰則、別表第一が事業の区分)
- 労働基準法施行規則(e-Gov法令検索。第5条が明示する労働条件と書面の交付、第12条の2が変形休日制の起算日、第15条が一斉休憩の例外の協定、第20条が休日と深夜が重なる場合、第25条の2が週44時間の特例、第31条が一斉休憩の適用除外、第32条・第33条が休憩の特例)
- 労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(e-Gov法令検索。時間外は2割5分、休日は3割5分)
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(PDF・平成29年1月20日策定。労働時間の考え方、後始末と手待時間が労働時間にあたること)
- 厚生労働省「振替休日と代休の違いは何か。」(振替休日は休日労働にならず、代休は休日労働の割増が必要なこと)
- 厚生労働省「スタートアップ労働条件」振替休日と代休の違い(振替休日の4つの条件、振替で週の法定労働時間を超える場合の割増)
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」時間外・休日労働と割増賃金(休日は暦日で与えること、法定休日の割増35%)
- 厚生労働省「労働基準法における『労働者』とは」(契約の形式や名称にかかわらず実態で判断すること)
※2026年9月24日に上記資料を確認しました。自分の店が接客娯楽業にあたるか、同伴やアフターが労働時間にあたるか、週44時間の特例の対象か、業務委託の人が労働者にあたるかは、労働基準監督署か社会保険労務士へ確認してください。






