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系列店へのヘルプに何が必要か。同じ会社か別会社かで変わる手続きと注意点

「今日は向こうの店が足りないから、ヘルプに入って」。系列店を持つ店では、よくあるやりとりです。ただ、ヘルプ先の店を営んでいるのが同じ会社か別の会社かで、当てはまる法律が変わります。この記事では、その分かれ目と、店がそろえておく書類と記録を、条文と厚生労働省・警察庁の資料で確認します。

編集部(水商売経営学)公開 2026年9月24日17分で読めます
夜の繁華街の歩道を、ドレスバッグとハンドバッグを持って歩く人の足元

この記事の要点

  • 同じ会社(同じ法人・同じ個人事業主)の別店舗へ行かせるのは配置転換。2024年4月1日以降に結ぶ雇用契約では、就業の場所の「変更の範囲」も明示する(労働基準法施行規則第5条第1項第1号の3)。臨時の応援先は変更の範囲に含まれないと、厚生労働省の通達は説明している
  • 別の会社の店へ行かせるなら、ヘルプ先とも雇用契約を結ぶ在籍型出向か、労働者派遣になる。労働者派遣事業には厚生労働大臣の許可が要り、無許可は1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金。業として行う労働者供給は職業安定法第44条で禁止されている
  • ヘルプ先の店でも、風営法の従業者名簿を営業所ごとに備え、客に接する人は生年月日や国籍を書類で確認する。2つの店で働いた時間は通算し、深夜や1日8時間超の割増賃金を払う(労働基準法第38条第1項・第37条)

系列店を2店、3店と持つと、店どうしで人の貸し借りが始まります。「今日は向こうの店のキャストが足りないから、1人回して」。店長どうしの電話ひとつで決まることも多いはずです。

ただ、ヘルプ先の店を営んでいるのが同じ会社か別の会社かで、当てはまる法律が変わります。ここでは、その分かれ目と、労働条件の明示、出向と派遣の区別、風営法の従業者名簿、労働時間の数え方を順に確認します。雇用契約で働くキャストやスタッフを前提にし、業務委託のキャストは最後に触れます。

まず、ヘルプ先の店の営業者が同じ会社か別の会社かを確かめる

最初に確かめるのは、店の看板ではなく営業者です。系列店や姉妹店と呼んでいても、店ごとに別の法人を立てていることがあります。オーナーが同じでも、法人が違えば法律上は別の会社です。

同じ法人・同じ個人事業主の店どうしなら社内の配置転換、別の法人の店なら会社をまたいだ人の貸し借りとして扱いが分かれます。 風俗営業の許可申請書にも深夜酒類提供飲食店営業の届出書にも、営業者の氏名又は名称を書く欄があります(風営法第5条第1項第1号・第33条第1項第1号)。それぞれの店の控えで名義を見れば分かります。

ヘルプ先法律上の形主に確認する決まり
同じ会社(同じ法人・同じ個人事業主)の別店舗配置転換労働条件の明示(就業の場所の変更の範囲)、就業規則
別の会社の店で、ヘルプ先とも雇用契約を結ぶ在籍型出向本人の同意か出向の規程、労働契約法第14条、職業安定法第44条
別の会社の店で、雇用契約は元の店だけのまま、ヘルプ先の指示で働く労働者派遣労働者派遣法第5条の許可

どの形でも、風営法の従業者名簿と、労働時間の通算はかかります。この2つは後半で見ます。

同じ会社の別店舗へ行くヘルプは「配置転換」にあたる

同じ会社の中で働く店が変わるのは、配置転換です。ここで関わるのが、雇うときに渡す労働条件の明示です。

労働基準法施行規則第5条第1項第1号の3は、明示する事項に「就業の場所及び従事すべき業務に関する事項(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)」を挙げています。この事項は書面で渡すのが原則で、本人が希望すれば、出力できるメールなどでもかまいません(同条第3項・第4項)。変更の範囲の明示は、2024年4月1日以降に結ぶ労働契約に適用されています。

では、1日だけのヘルプまで変更の範囲に書く必要があるのか。厚生労働省の施行通達は、次のように説明しています。

「就業の場所及び従事すべき業務」とは、労働者が通常就業することが想定されている就業の場所及び労働者が通常従事することが想定されている業務をいい、配置転換及び在籍型出向が命じられた場合の当該配置転換及び在籍型出向先の場所及び業務が含まれるが、臨時的な他部門への応援業務や出張、研修等、就業の場所及び従事すべき業務が一時的に変更される場合の当該一時的な変更先の場所及び業務は含まれないものであること。

厚生労働省労働基準局長通達「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令等の施行等について」(令和5年10月12日 基発1012第2号)

店を移ってもらうことがある、決まった曜日に系列店へ入ってもらう、という回し方なら、行き来する可能性のある店を変更の範囲に書いておきます。急な欠員を埋める単発のヘルプは、通達のいう一時的な応援にあたる余地があります。ただ、どこまでが臨時的かの日数などは通達に書かれていません。実際の回し方を説明して、労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。

明示の漏れは、30万円以下の罰金の対象です(労働基準法第15条第1項・第120条)。明示の全体は労働条件の明示にまとめています。

店を移ってもらう根拠を、契約書や就業規則に定めておく

別の店で働いてもらうときの根拠になるのは、労働契約の内容です。労働条件通知書で明示した範囲のほか、就業規則も契約の内容になりえます。

労働契約法第7条は、合理的な労働条件を定めた就業規則を労働者に周知していれば、労働契約の内容はその就業規則の労働条件によるとしています。ただし、本人と個別に違う条件で合意した部分は、この限りではありません(同条ただし書)。面接で「この店だけで働く」と約束して雇った人がいるなら、その約束との関係を先に確かめておきます。

常時10人以上の労働者を使う場合は、就業規則を作って所轄の労働基準監督署長に届け出る義務があります(労働基準法第89条、施行規則第49条)。作り方と人数の数え方は就業規則と36協定で確認できます。

なお、同じ会社の中での店舗の移動は、出向ではありません。出向は別の会社のもとで働かせることで、労働契約法第14条が、出向命令が権利の濫用にあたれば無効になると定めています。

別の会社の店へヘルプを出すときは、出向と派遣のどちらになるか

法人の違う店にヘルプを出すと、話が変わります。元の店の会社と雇用契約を結んだまま、別の会社の店で、その店の指示を受けて働くことになるからです。形は大きく2つに分かれます。

1つは在籍型出向です。元の会社との雇用契約を残したまま、ヘルプ先の会社とも雇用契約を結びます。もう1つは労働者派遣です。労働者派遣法第2条第1号は、自己の雇用する労働者を、その雇用関係のまま、他人の指揮命令を受けて、他人のために働かせることを労働者派遣と定めています。

在籍型出向労働者派遣
元の店の会社との関係雇用契約雇用契約
ヘルプ先の会社との関係雇用契約指揮命令を受ける関係
始めるときに必要なこと本人の個別の同意か、就業規則などの出向の定め人を出す側が労働者派遣事業の許可を受ける(労働者派遣法第5条)

厚生労働省の在籍型出向のハンドブックは、出向を命じるには、本人の個別的な同意を得るか、出向先での賃金・労働条件、出向の期間、復帰の仕方などが就業規則や労働協約などで労働者の利益に配慮して整備されている必要がある、としています。出向中の労働条件は、出向元・出向先・本人の三者の取り決めで決まります。その取り決めで定めた権限と責任に応じて、両方の会社が労働基準法などの使用者の責任を負います。

許可のない労働者派遣や、業としての労働者供給にあたるヘルプはできない

派遣の形で別会社の店に人を出すなら、出す側の会社は、労働者派遣事業の許可を厚生労働大臣から受けていなければなりません(労働者派遣法第5条第1項)。許可なく労働者派遣事業を行うと、1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金です(同法第59条第2号)。従業者が会社の業務として違反すれば、会社にも罰金が科されます(同法第62条)。

受け入れる側にも決まりがあります。許可を受けた派遣元以外から派遣を受けてはいけません(同法第24条の2)。これに違反して受け入れると、その時点の労働条件と同じ条件で、受け入れた側がその人に労働契約を申し込んだものとみなされます(同法第40条の6。違反にあたると知らず、知らなかったことに過失がなかった場合を除く)。

派遣が禁止されている業務は、港湾運送、建設、警備と、政令で定める医師・看護師などの医療関係の業務です(同法第4条第1項、施行令第2条)。接客の業務は、この一覧には挙がっていません。

出向の形をとる場合は、職業安定法の労働者供給との関係を見ます。労働者供給は、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて働かせることで、労働者派遣にあたるものを除きます(同法第4条第8項)。労働者供給事業は、労働組合などが許可を受けて無料で行う場合を除いて禁止され(同法第45条)、供給された労働者を受け入れて働かせることも禁止されています(同法第44条)。違反は1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金です(同法第64条第10号)。在籍型出向との関係を、厚生労働省は次のように説明しています。

在籍型出向の形態は、労働者供給に該当しますが、以下のいずれかの目的があるもの等は、基本的には、「業として行う」ものではないと判断されます。 ①労働者を離職させるのではなく、関係会社で雇用機会を確保する ②経営指導、技術指導を実施する ③職業能力開発の一環として行う ④企業グループ内の人事交流の一環として行う

厚生労働省「在籍型出向「基本がわかる」ハンドブック(第3版-災害時編-)」

つまり、出向の形をとっていても、業として行えば職業安定法第44条の禁止にかかりうるということです。自分の店の貸し借りが出向・派遣・労働者供給のどれにあたるかは、契約書と実際の回し方を持って、都道府県労働局の需給調整事業の担当部署に確認してください。

ヘルプに来た人も、受け入れ先の店の従業者名簿に載せる

ここからは、同じ会社でも別の会社でも共通の話です。風営法第36条は、風俗営業者、特定遊興飲食店営業者、午後10時以降も営業する酒類提供飲食店、深夜に営業する飲食店に、営業所ごとの従業者名簿を求めています。記載するのは、その営業の業務に従事する者の住所・氏名と、性別、生年月日、採用年月日、退職年月日、従事する業務の内容です(府令第25条)。名簿は、その人の退職日から3年を経過する日まで備えます(施行規則第106条)。

名簿は店ごとです。元の店の名簿に載っていても、ヘルプ先の店で働くなら、その店の業務に従事する者になります。警察庁の解釈運用基準は、名簿への記載は雇用契約のある労働者に限らないとしたうえで、外から来る人について次のように書いています。

業務の一部が委託される場合において、当該委託業務に携わる従業者も従業者名簿に記載することを要する。例えば、第三者から派遣されたコンパニオンやダンサー、歌手等も「当該営業に係る業務」として接待をし、ダンスを見せ、又は歌を聴かせるのであれば、「当該営業に係る業務に従事する者」に当たる。

警察庁「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について」(令和8年7月1日)第35の1(2)

キャバクラなどの接待飲食等営業、特定遊興飲食店、午後10時以降も営業する酒類提供飲食店では、客に接する業務に就かせようとする人の生年月日と国籍、外国籍の人は在留資格なども、決められた書類で確認します(風営法第36条の2第1項)。確認の記録は、名簿に記載して確認書類の写しを添えるなどの方法で作り、退職日から3年を経過する日まで保存します(同条第2項、施行規則第108条)。

名簿を備えない、必要な記載をしない、生年月日などの確認をしない、といった違反は、100万円以下の罰金の対象です(風営法第54条第3号から第5号)。同じ会社の店どうしで、元の店で確認した書類の写しをヘルプ先の名簿にどう備えるかは、管轄の警察署に確認してください。名簿の項目と作るタイミングは体入も従業者名簿が必要に、外国籍の人の確認は在留カードで確かめることにまとめています。

同じ会社の店どうしは、処分の面でもつながっています。警察庁の基準は、2つ以上の営業所を持つ風俗営業者の1つの営業所での違反について、同様の違反が他の営業所でも行われる蓋然性が認められるときなどは、他の営業所についても指示ができるとしています(第31の7)。

2つの店で働いた時間は合わせて数え、割増賃金を計算する

労働基準法第38条第1項は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と定めています。厚生労働省は、この「事業場を異にする場合」には事業主を異にする場合も含むとする通達(昭和23年5月14日 基発第769号)を示しています。同じ会社の2店で働いた時間は、もちろん合わせて数えます。

同じ会社の店で、同じ日に次のように働いてもらったとします。時給1,500円と仮定します。

時間帯店扱い1時間あたり
午後7時〜午後10時(3時間)元の店通常1,500円
午後10時〜午後11時(1時間)元の店深夜(25%以上)1,875円
午後11時半〜午前3時半(4時間)ヘルプ先深夜(25%以上)1,875円
午前3時半〜午前4時半(1時間)ヘルプ先1日8時間を超えた残業で、かつ深夜(50%以上)2,250円

店ごとに見ればどちらも8時間以内ですが、通算すると9時間です。1日8時間を超えた1時間は時間外労働で、深夜に及ぶので50%以上の割増です(労働基準法第32条第2項・第37条、施行規則第20条第1項)。深夜の割増は深夜手当はいくら払うのかで詳しく見ています。店をまたいだシフトと出退勤の時刻を1か所で集めて、通算した時間を出せるツールもあります。

別の会社の店とも雇用契約を結ぶ出向なら、事業主が違っても通算の対象です。どちらの会社が割増を払うかは、出向契約の取り決めと合わせて社会保険労務士に確認してください。

労災保険は、出向先の組織に組み入れられて出向先の指揮監督を受けて働く場合、出向元が払う賃金も含めて出向先で適用すると、厚生労働省のハンドブックは説明しています。2つの会社の両方で雇用されている人は、労災保険の給付額は、全ての就業先の賃金を合算して算定します。一方の就業先から他方へ移動する間の災害は、通勤災害として給付の対象です(厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説」)。加入の手続きはスタッフを雇ったら必要な保険の手続きにまとめています。

業務委託のキャストが複数の店に出る場合の扱い

業務委託の契約で複数の店に出ているキャストは、店ごとの契約の中身と実際の働き方で扱いが変わります。労働基準法の通算や割増は、雇用されている労働者についての決まりです。業務委託の契約でも、指示の受け方や時間の拘束などの実態から労働者と判断されれば、ここまでの決まりがかかります。

風営法の従業者名簿は、契約の形に関係しません。解釈運用基準のとおり、雇用契約のない人でも、その店の業務に従事するなら名簿に載せます。客に接するなら、生年月日などの確認も要ります。契約の形と実態が合っているかは、社会保険労務士に確認してください。

今日できる確認

  • 系列店・姉妹店それぞれの営業者の名義(法人名・個人名)を、許可証や届出の控えで確かめたか
  • 2024年4月以降に結んだ雇用契約で、就業の場所の変更の範囲に、行き来する可能性のある店を書いているか
  • 別の会社の店に人を出しているなら、出向として相手の会社とも雇用契約を結んでいるか。派遣の形なら、出す側が許可を受けているか
  • ヘルプで入った人を、その店の従業者名簿に載せ、客に接する人は生年月日や国籍の確認記録を残しているか
  • 同じ日に2つの店で働いた時間を合計し、1日8時間を超えた分と深夜の分の割増を払っているか

出典

※2026年9月24日に上記資料を確認しました。自分の店のヘルプの回し方が出向・派遣・労働者供給のどれにあたるかは都道府県労働局の需給調整事業の担当部署へ、労働時間の通算や割増賃金は労働基準監督署か社会保険労務士へ、従業者名簿の備え方は管轄の警察署へ確認してください。

編集部(水商売経営学)

水商売経営学の編集部です。実際に店を回してきた人間と、業界の外から入った編集者で書いています。法律・税務の記事は公的資料を出典として明示します。制度の説明は出典を示して公開し、許可・届出の要否や条文の解釈など「うちの店の場合はどうか」に踏み込む記事は、行政書士・税理士の確認が取れるまで公開しません。取材した店の話は、聞いた範囲のことだけを書きます。個別の判断は店の状況によって変わるため、迷う表現は確認したうえで進めてください。

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