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当日クビはできるか。キャストやスタッフを辞めさせるとき、本人が辞めるときの労務ルール

「明日から来なくていい」と営業後に伝える。体入の人に次の日程を出さない。更新の話をしないまま契約を切る。水商売の店で起きるこうした場面にも、雇用契約で働く人が相手なら労働基準法と労働契約法の決まりがかかります。この記事では、辞めてもらうとき、契約を更新しないとき、本人が辞めるときに、店が何をしなければならないかを条文で確認します。

編集部(水商売経営学)公開 2026年9月24日17分で読めます
閉店後の控室のテーブルで、返却された制服のジャケットと店の鍵に手を添える手元

この記事の要点

  • 雇っている人を解雇するときは、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を払う(労働基準法第20条)。予告の日数は、平均賃金を払った日数だけ短くできる
  • 日日雇い入れる人、2か月以内の期間を決めた人、試用期間中の人(14日まで)などは、予告の規定が外れる(同法第21条)。ただし予告や手当の手続きと、解雇が有効かどうかは別の問題
  • 3回以上更新したか1年を超えて働いている有期契約の人を更新しないときは、30日前までに予告する(厚生労働省告示)。期間の定めのない雇用は、本人が申し入れれば2週間で終わる(民法第627条)

営業のあとに「明日から来なくていいから」と伝えて終わりにする。体入の人に、次の日程を出さないまま連絡を切る。飛んだキャストの最後の給料を止めておく。どれも水商売の店で起きうる場面です。

相手が雇用契約で働く人なら、どの場面にも労働基準法や労働契約法の決まりがあります。この記事では、店から辞めてもらうとき、契約を更新しないとき、本人が辞めるときに必要なことを、条文と厚生労働省の資料で確認します。個別の解雇が有効かどうかの判断はしません。

辞めさせ方や辞め方によって変わる、店がすること

先に全体を並べます。どれも雇用契約で働く人(労働者)についての決まりです。業務委託のキャストについては最後の見出しで扱います。

場面主な決まり店がすること
当日に「明日から来なくていい」と伝える労働基準法第20条30日前の予告をするか、足りない日数分の平均賃金を払う
体入や試用期間の人を断る同法第21条日日雇い入れや試用期間14日までなどは予告の規定が外れる
期間を決めた契約の途中でやめてもらう労働契約法第17条やむを得ない事由がなければ解雇できない
契約を更新しない(雇い止め)厚生労働省告示第2条、労働契約法第19条3回以上更新か1年超なら30日前までに予告する
飛んで連絡が取れない労働基準法第20条・第23条・第24条解雇するなら予告か手当、または除外認定。働いた分の給料は払う
本人が辞めると言う民法第627条、労働基準法第22条・第23条期間の定めがなければ申入れから2週間で終わる。求められたら証明書を渡し、7日以内に払う

店から解雇するときは、30日前の予告か解雇予告手当が必要

店の側から一方的に雇用を終わらせるのが解雇です。解雇の予告は、労働基準法第20条が定めています。

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。(後略)

労働基準法 第20条第1項

当日に「明日から来なくていい」と伝えるのは、予告なしの解雇です。この場合は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を払います。予告の日数は、平均賃金を1日分払うごとに1日短くできます(同条第2項)。厚生労働省の説明では、解雇日の10日前に予告したなら、20日分の平均賃金が必要です。

東京労働局の資料は、予告せずに即時に解雇するなら手当は解雇と同時に払い、予告と手当を組み合わせるなら遅くとも解雇の日までに払う必要がある、としています。予告は口頭でも有効ですが、同じ資料は、解雇する日と具体的な理由を書いた解雇通知書を作ることが望ましいとしています。

例外は2つです。天災事変その他やむを得ない事由で事業を続けられなくなった場合と、労働者の責めに帰すべき事由で解雇する場合です。どちらも、労働基準監督署長の認定を受けなければなりません(同条第3項が準用する第19条第2項)。店の判断だけで例外にはできません。

第20条に違反すると、6月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金です(同法第119条)。予告手当を払わなかった店に対して、裁判所は労働者の請求により、未払いの額と同じ額の付加金の支払を命じることができます(同法第114条)。

解雇予告手当のもとになる平均賃金の計算方法

平均賃金は、労働基準法第12条が定めています。原則は、計算すべき事由が起きた日以前の3か月間に払った賃金の総額を、その期間の総日数(暦の日数)で割った金額です。賃金の締切日があれば、直前の締切日から数えます。

時給や日給で払っている人は、出勤日が少ないと原則の計算では金額が低くなります。そのため、賃金の総額をその期間に働いた日数で割った金額の60%を下回ってはならない、という最低の保障があります(同条第1項第1号)。臨時に払った賃金や、3か月を超える期間ごとに払う賃金は、総額に入れません(同条第4項)。雇ってから3か月たっていない人は、雇ってからの期間で計算します(同条第6項)。

時給制のスタッフで、仮に次の条件で計算します。直前の3か月を6月1日から8月31日の92日、その間の出勤を40日、払った賃金の総額を60万円とします。

計算式金額
原則(総日数で割る)600,000円 ÷ 92日約6,522円
最低の保障(働いた日数で割って60%)600,000円 ÷ 40日 × 60%9,000円
平均賃金原則が最低の保障を下回るので、最低の保障を使う9,000円
即時に解雇するときの手当9,000円 × 30日270,000円以上
10日前に予告したときの手当9,000円 × 20日180,000円以上

実際の計算では、締切日の取り方や、除く期間(業務上のけがで休んだ期間など、同条第3項)の扱いで結果が変わります。自分の店の数字で計算するときは、労働基準監督署か社会保険労務士に確認してください。

体入や試用期間の人を断るときにも、予告の手続きは要るか

予告の規定が当てはまらない人は、第21条に並んでいます。

前条の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が一箇月を超えて引き続き使用されるに至つた場合、第二号若しくは第三号に該当する者が所定の期間を超えて引き続き使用されるに至つた場合又は第四号に該当する者が十四日を超えて引き続き使用されるに至つた場合においては、この限りでない。 一 日日雇い入れられる者 二 二箇月以内の期間を定めて使用される者 三 季節的業務に四箇月以内の期間を定めて使用される者 四 試の使用期間中の者

労働基準法 第21条

試用期間の人に予告が要らないのは、14日までです。店が決めた試用期間が3か月でも、14日を超えて続けて使っていれば予告の規定がかかります。日日雇い入れる人は1か月、2か月以内の期間を決めた人はその期間を超えて続けて使えば、同じく予告の対象になります。2か月の契約を何度も続けている人は、この例外に入らなくなります。

体入を雇用として受け入れている店なら、体入の日の働き方が、その日限りの雇い入れなのか、試用期間の初日なのかを、条件を示す段階で決めておく必要があります。どちらでも、体入の日に働いた分の賃金は払います。体入の条件の示し方は体入初日の受け入れに、名簿の扱いは体入も従業者名簿が必要にまとめました。

第21条が外すのは予告の手続きだけです。辞めてもらう理由の問題は、次の見出しのとおり残ります。

予告手当を払っても、合理的な理由がなければ解雇は無効になる

労働契約法第16条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇を、権利の濫用として無効にしています。30日前の予告や予告手当は解雇の手続きの決まりで、解雇そのものが有効かどうかは別に判断されます。 厚生労働省は、1回の失敗ですぐに解雇が認められるわけではなく、最終的には裁判所が判断するとしています。

どんなときに解雇することがあるか(解雇の事由)は、前もって書面で示しておくものです。労働条件を示すときに書面で渡す事項に「退職に関する事項(解雇の事由を含む。)」が入っています(労働基準法施行規則第5条第1項第4号・第3項)。常時10人以上の労働者を使う店は、就業規則にも書きます(労働基準法第89条第3号)。就業規則の決まりは就業規則と36協定は何人から必要かにまとめました。

理由があっても解雇できない期間もあります。業務上のけがや病気で療養のために休む期間とその後30日間、産前産後の休業期間とその後30日間です(労働基準法第19条)。妊娠中と産後1年以内の解雇の扱いは、妊娠したら店が守ることで確認できます。

「辞めてくれないか」と勧めるのは、解雇ではなく退職勧奨です。厚生労働省は、本人が自由な意思で応じるなら問題にならないが、自由な意思決定を妨げる退職勧奨は違法な権利侵害とされる場合がある、としています。

期間を決めて雇った人の途中解雇と、雇い止めの決まり

3か月ごと、半年ごとのように期間を決めて雇う契約(有期労働契約)は、期間の途中で終わらせるほうが難しくなります。労働契約法第17条は、やむを得ない事由がなければ、契約期間が終わるまでの間に解雇できないとしています。厚生労働省は、期間の定めのない契約よりも解雇の有効性が厳しく判断されると説明しています。

期間が終わって更新しないこと(雇い止め)にも、手続きがあります。

使用者は、有期労働契約(当該契約を三回以上更新し、又は雇入れの日から起算して一年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。次条第二項において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の三十日前までに、その予告をしなければならない。

有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号) 第2条

本人が更新しない理由の証明書を求めたら、遅滞なく渡します(同告示第3条)。契約を結んだあとで、更新の回数や通算の期間に上限を設けたり、上限を引き下げたりするときは、前もって理由を説明します(同告示第1条。令和6年4月1日から適用)。

さらに、何度も更新してきて期間の定めのない契約と同じように見える場合や、本人が更新を期待することに合理的な理由がある場合は、労働契約法第19条がかかります。本人が更新を申し込んだのに、合理的な理由なく断ると、前と同じ条件で更新を承諾したものとみなされます。更新するかどうかの基準や上限は、契約のときに書面で示す事項です(労働基準法施行規則第5条第1項第1号の2)。

連絡が途絶えて飛んだキャストを辞めさせる手続きと、給料の支払い

連絡が取れないまま来なくなった人を、店の側から辞めさせるなら、それは解雇です。予告も手当もなしに解雇するには、労働者の責めに帰すべき事由として、労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)を受ける必要があります。

福井労働局の資料は、認定の基準になる昭和23年の通達の例として「原則として2週間以上の正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」を挙げています。認定は、使用者と労働者の双方から事情を聞いて判断され、原則として解雇の日までに受ける必要があるとしています。連絡した日時と手段、本人の反応を記録しておくことが、ここで生きてきます。記録の残し方は当日欠勤と遅刻を口頭で済ませると何が起きるかにまとめました。

飛んだからといって、働いた分の給料を払わなくてよいことにはなりません。賃金は全額を払う決まりです(労働基準法第24条)。「飛んだら罰金」のように違約金や損害賠償の額を前もって決める契約は、同法第16条で禁止されています。本人など権利のある人から請求があれば、7日以内に払います(同法第23条)。給料の払い方の決まりは日払い・前借り・罰金の天引きにまとめました。

本人が辞めると伝えてきたときの退職日と、証明書・給料の精算

期間の定めのない雇用なら、本人はいつでも辞める申入れができ、申入れの日から2週間たてば雇用は終わります(民法第627条第1項)。期間を決めた契約でも、やむを得ない事由があれば直ちに解除できます。その事由が一方の過失によるときは、相手に損害賠償の責任を負います(民法第628条)。1年を超える期間を決めた契約の人は、高度な専門知識を持つ一定の人や60歳以上の人などを除き、契約の初日から1年たったあとはいつでも退職を申し出られます(労働基準法第137条)。

辞めた人から、使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職の事由について証明書を求められたら、遅滞なく渡します。退職の事由が解雇なら、その理由も含みます(同法第22条第1項)。解雇を予告した日から退職の日までの間に、解雇の理由の証明書を求められた場合も同じです(同条第2項)。本人が求めていない事項は書いてはいけません(同条第3項)。

最後の給料は、請求があれば7日以内に払い、預かっている保証金などの本人のお金も返します(同法第23条第1項)。金額に争いがあっても、争いのない部分は7日以内に払います(同条第2項)。第22条第1項から第3項と第23条に違反すると、30万円以下の罰金です(同法第120条)。源泉徴収票や離職票など、辞めたあとに店が出す書類は辞めたときの書類と期限にまとめています。

業務委託で働くキャストとの契約を終えるときに注意する法律

労働基準法の解雇予告は、「労働者」が対象です。同法第9条は、事業に使用され、賃金を支払われる者を労働者としています。業務委託の契約で働くキャストには、そのまま当てはまるとは限りません。ただし、契約の名前ではなく働き方の実態で労働者にあたると判断されれば、ここまでの決まりがかかります。

労働者にあたらない場合も、別の法律がかかることがあります。フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)第16条は、継続的業務委託の契約を解除するとき(期間が終わって更新しない場合を含む)に、少なくとも30日前までの予告を求めています。継続的業務委託は、6か月以上の期間行う委託(更新で6か月以上続くものを含む)です(同法施行令第3条)。

この決まりがかかるのは、委託する側が従業員を使う個人か、2人以上の役員がいるか従業員を使う法人で、委託を受ける側が従業員を使わない個人などの場合です(同法第2条)。店がキャストに接客を委託する形は、同法の「役務の提供」の委託(同条第3項第2号)にあたりえます。予告は、書面、ファクシミリ、電子メールなどで行います(厚生労働省関係の同法施行規則第3条)。災害などで予告が難しい場合や、相手の責めに帰すべき事由で直ちに解除する必要がある場合などは例外です(同規則第4条)。

自分の店のキャストが労働者にあたるのか、フリーランス法の対象になるのかは、この記事では判断できません。契約書と実際の働き方を持って、社会保険労務士か弁護士に確認してください。

今日できる確認

  • 労働条件通知書と就業規則に、解雇の事由と、有期契約の更新の基準・上限を書いているか
  • 当日に辞めてもらったことがある人について、予告手当を払っていたか。平均賃金の計算に使う3か月分の賃金と出勤日数を出せるか
  • 体入や試用期間の人が、試用期間14日や日日雇い入れの1か月を超えて働いていないか
  • 3回以上更新したか1年を超えて働いている有期契約の人の、契約満了日と30日前の日を一覧にしているか
  • 飛んだ人の連絡記録と、未払いの給料が残っていないかを確かめたか

判断に迷う場合は、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談できます。総合労働相談コーナーは解雇や雇止めも対象にしており、労働者と事業主のどちらからの相談も受けています。予約は不要で、無料です。

出典

※2026年9月24日に上記資料を確認しました。個別の解雇や雇い止めが有効か、業務委託のキャストが労働者にあたるか、フリーランス法の対象になるかは、労働基準監督署、総合労働相談コーナー、社会保険労務士、弁護士へ確認してください。

編集部(水商売経営学)

水商売経営学の編集部です。実際に店を回してきた人間と、業界の外から入った編集者で書いています。法律・税務の記事は公的資料を出典として明示します。制度の説明は出典を示して公開し、許可・届出の要否や条文の解釈など「うちの店の場合はどうか」に踏み込む記事は、行政書士・税理士の確認が取れるまで公開しません。取材した店の話は、聞いた範囲のことだけを書きます。個別の判断は店の状況によって変わるため、迷う表現は確認したうえで進めてください。

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