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日払い・前借り・罰金の天引き。キャストやスタッフに給料を払うときの決まり

日払いは、夜の店では当たり前の払い方です。ただ、その日払いの中から、ドレス代を引く、前借りの分を差し引く、遅刻の罰金を引く。こうした天引きには、労働基準法の決まりがあります。この記事では、雇っているキャストやスタッフに給料を払うときに守ることを、条文で確認します。

編集部(水商売経営学)公開 2026年9月24日7分で読めます
開店前のカウンターの端で、白い封筒を手渡す手元と受け取る手元

この記事の要点

  • 給料は通貨で、本人に直接、全額を、毎月1回以上決まった日に払う(労働基準法第24条)。日払いはこの原則の中で認められるが、天引きは税や社会保険など法令で決まったもの以外、労使の書面の協定がないとできない
  • 前借りを給料から差し引くこと(相殺)は禁止(第17条)。遅刻や欠勤の罰金額をあらかじめ決めておく契約も禁止(第16条)。減給の制裁は就業規則で定め、上限の範囲に限る(第91条)
  • 辞めた人から請求されたら7日以内に払う(第23条)。控除した額も賃金台帳に書き、当分の間3年間保存する

営業が終わって、その日の分を封筒で渡す。夜の店では見慣れた光景です。ただ、その封筒の中身から、ドレスのクリーニング代、寮費、先週の前借り、遅刻の罰金が引かれている。どこまでが許されるのかは、労働基準法に決まりがあります。

この記事では、キャストやスタッフを雇用契約で働かせている店が、給料を払うときに守ることを、条文で確認します。

給料の払い方の5つの原則

給料の払い方は、労働基準法第24条が定めています。

賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。

労働基準法 第24条(抜粋)

整理すると、次の5つです。

原則意味
通貨で現金で払う(本人の同意があれば口座振込なども可。施行規則第7条の2)
直接本人に払う。紹介者や家族に渡さない
全額を決めた金額を全部払う。勝手に引かない
毎月1回以上月に1回は払う
一定の期日に払う日を決めておく

違反すると30万円以下の罰金です(同法第120条)。

日払いは認められている。ただし原則は同じ

日払いは、毎月1回以上という原則より多く払う形なので、それ自体は問題ありません。

気をつけるのは、日払いと月払いを組み合わせている店です。日払いで一部を渡し、残りを月末に払う形なら、月末に払う日を決めておく必要があります。その日に払う金額が、働いた分から日払い済みの分を差し引いた残り全部になっているかを確かめてください。

天引きには、書面の協定がいる

税金や社会保険料のように法令で決まったものは、給料から差し引けます。それ以外のものを引くには、労使の書面の協定が要ります(同法第24条第1項ただし書)。

協定の相手は、労働者の過半数で組織する労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者です。ドレスのクリーニング代、寮費、送りの費用、制服代などを給料から引いている店は、この協定があるかを確認してください。協定がないまま引けば、全額払いの原則に反します。送り代を給料から引く前にそろえることは、送りの車の事故と送り代でも扱っています。

引いた金額は、賃金台帳に書き込まなければなりません(施行規則第54条第1項第8号)。

前借りを給料から差し引くのは禁止

前借りは、夜の店でよくあるお金の貸し借りです。ここには、労働基準法がはっきり線を引いています。

使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。

労働基準法 第17条

この条文が禁じているのは、前貸しをすることではなく、貸した分を給料と相殺すること、つまり給料から差し引いて回収することです。 給料は全額を払い、前借りの返済は別に扱います。違反すると6月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金です(同法第119条)。客の売掛の肩代わりを前借りの形にして給料と差し引くやり方の問題は、客の売掛の扱いに書きました。

働いた分の給料を、支払日の前に先に払うのは前借りとは別の話です。出産、病気、災害などの非常の場合に本人が請求すれば、支払日の前でも、それまでに働いた分を払わなければなりません(同法第25条、施行規則第9条)。

罰金を決めておく契約は禁止、減給には上限

「無断欠勤は1回1万円」「遅刻は1回3,000円」のように、罰金の額をあらかじめ決めておく契約は、労働基準法第16条が禁止しています。

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

労働基準法 第16条

違反すると、6月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金です(同法第119条)。

店のルール違反に給料を減らす形で対応するなら、就業規則に減給の制裁として定め、上限の範囲に収める必要があります。1回の額は平均賃金の1日分の半額まで、合計は1回の支払いの総額の10分の1までです(同法第91条)。遅刻や欠勤の記録と減給の関係は、当日欠勤と遅刻を口頭で済ませると何が起きるかにまとめました。罰金などで1時間あたりの額が下がりやすい点は、給料と最低賃金の確かめ方で確認できます。

辞めた人への支払いは、請求から7日以内

キャストやスタッフが辞めたとき、本人などから請求があれば、7日以内に給料を払い、預かっている保証金などの本人のお金も返さなければなりません(同法第23条)。「次の給料日まで待って」「ドレス代を清算してから」と支払いを止めることはできません。金額に争いがある部分があっても、争いのない部分は7日以内に払います。

払った記録を、賃金台帳に残す

使用者は、給料を払うたびに賃金台帳へ書き込み、当分の間3年間保存します(同法第108条・第109条、附則第143条)。書く項目には、働いた日数と時間数、深夜に働いた時間数、賃金の種類ごとの額、控除した額が含まれます(施行規則第54条)。日払いの日も、その都度の記録が必要です。本人に渡す給与明細の項目は、給与明細は渡さないといけないのかにまとめています。

深夜の時間の割増の計算は深夜手当はいくら払うのかに書きました。日払いの金額に深夜の割増が入っているかも、あわせて確かめてください。

今日できる確認

  • 給料から何かを引いているなら、労使の書面の協定があるか
  • 前借りの返済を、給料から差し引いて回収していないか
  • 遅刻や欠勤の罰金を、金額を決めて取っていないか
  • 辞めた人から請求されたとき、7日以内に払う流れになっているか
  • 日払いの分も含めて、賃金台帳に記録しているか

出典

※2026年9月24日に上記資料を確認しました。キャストを業務委託で扱っている店では、労働基準法がそのまま当てはまるかは契約の実態で変わります。自分の店の払い方や協定の結び方は、労働基準監督署か社会保険労務士へ確認してください。

編集部(水商売経営学)

水商売経営学の編集部です。実際に店を回してきた人間と、業界の外から入った編集者で書いています。法律・税務の記事は公的資料を出典として明示します。制度の説明は出典を示して公開し、許可・届出の要否や条文の解釈など「うちの店の場合はどうか」に踏み込む記事は、行政書士・税理士の確認が取れるまで公開しません。取材した店の話は、聞いた範囲のことだけを書きます。個別の判断は店の状況によって変わるため、迷う表現は確認したうえで進めてください。

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