
この記事の要点
- 厚生労働省は、本籍・出生地、家族、住宅状況、生活環境、宗教、支持政党、尊敬する人物、愛読書などを、応募用紙や面接で把握しないよう求めている。採否に使わないつもりでも、把握すれば影響してしまうため
- 職業安定法第5条の5は、労働者を募集する者にも、業務の目的に必要な範囲で目的を明らかにして個人情報を集めることを求めている
- 風営法の本人確認は、本籍地の都道府県名が分かる書類での確認を求めている。法令で決まった確認は面接の評価と切り離し、必要な範囲で、決めた人が扱う
面接の最初の数分、緊張をほぐそうとして「地元どこ?」「実家暮らし?」と聞く。店の側に悪気はなくても、応募者にとっては仕事と関係のないことを探られる時間です。
厚生労働省は、公正な採用選考の考え方として、応募者の適性・能力と関係のない事項を面接で尋ねないよう求めています。この記事では、その中身と、水商売の店で起きやすい場面への当てはめ方を整理します。
厚生労働省が挙げる「把握しないこと」
厚生労働省は、公正な採用選考の基本を2つ挙げています。応募者の基本的人権を尊重すること、応募者の適性・能力に基づいた基準で行うことです。
そのうえで、次の事項を応募用紙に書かせたり、面接で尋ねたりして把握することは、就職差別につながるおそれがあるとしています。
| 区分 | 事項 |
|---|---|
| 本人に責任のない事項 | 本籍・出生地、家族(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)、住宅状況(間取り、部屋数、住宅の種類、近隣の施設など)、生活環境・家庭環境 |
| 本来自由であるべき事項 | 宗教、支持政党、人生観・生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合や社会運動、購読新聞・雑誌・愛読書 |
| 採用選考の方法 | 身元調査、適性・能力に関係のない事項を含む応募書類の使用、合理的・客観的に必要性が認められない健康診断 |
厚生労働省は理由も書いています。これらは採用基準にしないつもりでも、把握すれば結果として採否の決定に影響を与えてしまう、というものです。
水商売の面接で出やすい質問に当てはめると
一覧を、面接で実際に出やすい質問に置き換えてみます。
| 出やすい質問 | 一覧のどれにあたるか |
|---|---|
| 「地元どこ?」「実家は何県?」 | 本籍・出生地 |
| 「親は何の仕事してるの?」「兄弟は?」 | 家族 |
| 「一人暮らし? どんな部屋?」 | 住宅状況、生活環境 |
| 「何か宗教やってる?」 | 宗教 |
| 「尊敬する人は?」「最近読んだ本は?」 | 尊敬する人物、愛読書 |
一覧にない質問でも、判断の基準は同じです。その答えが、この店の仕事をこなせるかどうかと関係するか。関係しないなら、聞かなくても採否は決められます。
職業安定法の個人情報のルール
公正な採用選考は、心がけの話だけではありません。職業安定法第5条の5は、労働者の募集を行う者などに、求職者の個人情報の集め方を定めています。
その業務の目的の達成に必要な範囲内で、厚生労働省令で定めるところにより、当該目的を明らかにして求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。
職業安定法 第5条の5第1項(抜粋)
厚生労働省は、この規定と平成11年の告示により、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報などの収集は原則として認められないと説明しています。この規定の対象には、自分で求人を出して人を集める店も含まれます。
本人確認の書類と、面接での質問は分ける
水商売の店には、ここで一つ引っかかる点があります。風営法の本人確認です。
風営法第36条の2は、接待飲食等営業の店と深夜に酒類を提供する飲食店に、客に接する業務につかせようとする人の生年月日と国籍を、法令で定めた書類で確認するよう求めています。日本国籍の人について、その書類は内閣府令第26条で決まっています。
住民票記載事項証明書(住民基本台帳法第七条第二号に掲げる事項及び本籍地都道府県名が記載されているものに限る。)
風営法に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令 第26条第1号イ
一方で厚生労働省は、本籍が記載された住民票の写しを提出させることを、本籍に関する事項の把握の例に挙げています。法令で決まった本人確認は、面接で出身を尋ねることとは目的が違います。そのため、扱いを分けておく必要があります。
分け方の例は次のとおりです。
- 確認の目的(風営法の本人確認)を本人に伝えてから書類を見る
- 府令が求めているのは本籍地の都道府県名まで。それ以上の情報を書き写さない
- 確認する人と、記録を保管する場所を決めておく
- 確認で知った内容を、採否や配属の判断に使わない
確認の書類と記録の残し方は体入も従業者名簿が必要に、外国籍の人の在留カードの見方は外国籍のキャストやスタッフを雇う前にに、年齢の確認は18歳未満と年齢確認に書きました。どこまで扱ってよいか迷うときは、管轄の警察署かハローワークに確認してください。
質問は、面接の前に紙に書いておく
厚生労働省は、面接を行う場合、職務遂行に必要な適性・能力を評価する観点から、あらかじめ質問項目と評価基準を決めておくよう求めています。
その場で思いついた質問をしない一番簡単な方法は、先に書いておくことです。たとえば次のような項目です。
| 聞くこと・伝えること | 目的 |
|---|---|
| 働ける曜日と時間帯、帰りの手段 | シフトに入れるかどうか |
| これまでの接客の経験 | 初日に付く人と教える範囲を決める |
| 店の仕事の内容と条件(時給、締め日、支払い方法) | 募集で示した条件と同じか確かめてもらう |
| 初日に持ってくる本人確認の書類 | 勤務前に確認を済ませる |
条件の伝え方と初日の流れは体入初日の受け入れにまとめています。面接を担当する人が複数いる店では、質問の紙を共有しておくと、人によって聞くことにばらつきが出ません。
今日できる確認
- 面接で出身地や家族のことを聞く流れになっていないか
- 店独自の応募フォームや履歴書に、本籍、家族、住まいの様子を書く欄がないか
- 面接の質問と評価の基準を、紙で決めているか
- 本人確認の書類を見る人と、その記録の保管場所が決まっているか
- 本人確認で知った内容を、採否の判断に使っていないか
出典
- 厚生労働省「公正な採用選考の基本」(採用選考時に配慮すべき事項)
- 職業安定法(e-Gov法令検索。第5条の5が求職者等の個人情報の取扱い)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索。第36条の2が接客従業者の生年月日等の確認)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令(e-Gov法令検索。第26条が確認書類)
※2026年9月23日に上記資料を確認しました。自分の店の応募書類や確認の手順が適切かは、ハローワークか社会保険労務士へ、風営法の確認書類は管轄の警察署へ確認してください。






