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客に送る営業のメールやSMSに同意は要るか。特定電子メール法の決まりと、LINEの扱い

名刺をくれた客に、イベントの案内をメールで送る。来店のお礼をSMSで送る。水商売の店ではよくある連絡ですが、広告や宣伝のために送るメールとSMSには特定電子メール法の決まりがあります。送ってよい相手、メッセージに書かなければならないこと、「もう送らないで」と言われたときの扱いを、法律と総務省・消費者庁のガイドラインで確認します。

編集部(水商売経営学)公開 2026年9月24日16分で読めます
宵の店のカウンターの端で、スマートフォンのメッセージ画面を操作する手元。横にカクテルグラス

この記事の要点

  • 店の営業の広告・宣伝のために送るメールは特定電子メール法の対象で、電話番号で送るSMSも含まれる。送ってよいのは、あらかじめ同意した人と、名刺などの書面でメールアドレスを知らせてきた人など法律が挙げる相手だけ
  • 同意を取ったら記録を残し、受信拒否の連絡を受けたら以後は送らない。メッセージには送信者の氏名・名称と受信拒否の連絡先などを表示する。ガイドラインは、屋号やブランド名では送信者名の表示にならないとしている
  • 決まりを守っていない送信には、総務大臣と内閣総理大臣(消費者庁長官に委任)が措置命令を出せる。命令に違反すると1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金(同意の記録の保存に係る命令は100万円以下の罰金)で、法人には3,000万円以下の罰金もある

名刺交換をした客に、翌週のイベントの案内をメールで送る。初めて来た客に、次の日の夕方にお礼のSMSを送る。客の連絡先が増えるほど、店からの一斉送信は手軽な集客の手段になります。

ただ、店の営業のために送るメールとSMSには、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)があります。同意のない相手に送る、送信者の名前が店名だけ、配信を止める連絡先がない。どれも法律の決まりから外れます。この記事では、送ってよい相手と、メッセージに書くこと、止めてと言われたときの扱いを、法律と総務省・消費者庁のガイドラインで確認します。

店の営業や宣伝で送るメールやSMSは、特定電子メール法の対象になる

特定電子メール法は、送信者が「自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信をする電子メール」を「特定電子メール」と定めています(第2条第2号)。送信者は、営利を目的とする団体と、営業を営む場合の個人に限られます。会社で営む店も、個人で営むスナックも、店の営業のために送れば送信者にあたります。

対象の「電子メール」は、総務省令で定める通信方式を使うものです(第2条第1号)。省令は、いわゆるメールの方式と、携帯する端末に電話番号で情報を届ける方式の2つを挙げています。総務省はこの点を次のように説明しています。

「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第二条第一号の通信方式を定める省令」により、携帯して使用する通信端末機器(携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等)同士でメッセージを電話番号により送受信するサービス(例えば、ショートメッセージサービス(SMS)及び電話番号を用いてアプリケーションによりメッセージを送受信するサービス)も特定電子メール法に規定する電子メールの通信方式の一つとされています。

総務省「迷惑メール対策」(電気通信消費者情報コーナー)

客の電話番号あてに送るSMSでも、イベントの告知や料金の案内なら同じ決まりがかかります。

どこまでが広告・宣伝かについて、ガイドラインは例を示しています。商品やサービスを宣伝する内容のメールは、明らかに特定電子メールです。宣伝のウェブサイトへ誘導する目的を含むメールも当たります。一方で、広告や宣伝の内容を含まず、宣伝のサイトへの誘導もしない単なる時候の挨拶は、当たらないものもあるとしています。来店のお礼だけを伝えるSMSと、「次は○日のイベントで」と誘う一文を添えたSMSでは、扱いが変わりうるということです。

LINEのメッセージにも、この法律はかかるのか

客とのやり取りの中心がLINEという店は多いはずです。ここは、確認できた範囲だけを書きます。

特定電子メール法の「電子メール」は、先に見た2つの通信方式を使うものに限られます。総務省は、SMSと、電話番号を用いてアプリでメッセージを送受信するサービスを含むと説明しています。一方で、LINEなどSNSのメッセージが法律の対象になるかどうかを明示した記述は、総務省・消費者庁の資料では確認できませんでした。

対象かどうかがはっきりしないからといって、同意のない相手に宣伝を送り続けてよいことにはなりません。LINE公式アカウントには運営会社の規約やガイドラインがあり、配信のルールはそちらにも書かれています。規約は会社ごとに違い、改定もあるので、使っているサービスの最新の規約を確認してください。客の連絡先そのものは、LINEでも個人情報保護法の対象です。扱い方は防犯カメラの録画と客の連絡先の管理で整理しました。

営業メールを送ってよい相手は、同意した客など4つに限られる

特定電子メール法第3条第1項は、特定電子メールを送ってよい相手を4つに限っています。これ以外の人に送ることは禁止です。

送ってよい相手条文水商売の店で考えられる場面
あらかじめ、送ってほしい、または送ってよいと送信者(または送信委託者)に知らせた人第3条第1項第1号顧客カードやフォームで、案内を受け取るかを選んでもらった客
書面で自分のメールアドレスを送信者に知らせた人第3条第1項第2号、施行規則第2条名刺を渡してきた客(ガイドラインが名刺を例に挙げている)
広告・宣伝する営業を営む者と取引関係にある人第3条第1項第3号継続して取引している相手。一度の来店だけで当たるかは状況による
インターネットでメールアドレスを公表している団体や営業を営む個人第3条第1項第4号、施行規則第3条主に事業者どうしの連絡。受信拒否の文言を併せて公表していれば除く

同意は、誰から広告・宣伝のメールが届くのかを本人が分かったうえでするものです。ガイドラインは、極めて小さい文字で規約に書いただけでは受信者が認識できる表示とはいえず、「関連サイト」のような書き方では適切に同意を取ったとはいえないとしています。顧客カードに「○○(店の運営者名)から、イベントや料金のご案内をメールとSMSでお送りします」と書き、受け取るかどうかを客に選んでもらう形にすると、同意が分かりやすく残ります。

名刺の例外は、名刺を渡した側にも、受け取った相手からメールが来ることの予測があるという考え方です。ただし、ガイドラインは通知の相手方となる送信者が特定されている必要があるとしています。名刺を受け取ったのがキャスト個人で、送るのが店の名義という場合などに、この例外にそのまま当てはまるかは確認が要ります。SMSの電話番号に名刺の例外がどう当てはまるかを明示した資料も、確認できませんでした。迷う相手には、同意を取ってから送るのが確実です。

一度来店しただけの客が「取引関係にある者」に当たるかについて、ガイドラインは次のように書いています。

商品・サービスを購入については、一度の購入のみでは必ずしも継続的な関係にあるとは言えないが、以後の購入等の取引が予定されている場合には、外形的に判断して取引関係にあるといえる場合もあると考えられる。

総務省・消費者庁「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」

一度の来店で当然に送ってよい、とは読めません。来店のお礼に宣伝を添えて送るなら、その前に同意を取っておく方が安全です。

同意を取った記録は、最後に送った日から1か月保存する

同意を受けた送信者は、同意があったことを示す記録を保存しなければなりません(第3条第2項)。保存するのは、次のどちらかです(施行規則第4条第1項)。

  • 客ごとの送り先のメールアドレスについて、同意を受けた時期と方法など、そのときの状況が分かる記録
  • 送ってよい連絡先を区別したリストと、同意を取るときに見せた書面・メール・ウェブ画面の定型の文面

紙の顧客カードで同意を取っているなら、カードの文面の見本と、同意した客の連絡先の一覧を残す形でも足ります。保存期間は、その相手に最後に送った日から1か月を経過する日までです(施行規則第4条第2項)。措置命令を受けた場合は、1年に延びる場合があります。

保存期間は法律上の最低限です。ガイドラインは、客と同意の有無で揉めたときに説明できるよう、必要な記録を持っておくことを推奨しています。客の側から「送ってよいとは言っていない」と言われたとき、店が示せるのはこの記録だけです。

「もう送らないで」と言われたら、以後は送れない

同意を取った客でも、名刺をくれた客でも、送らないでほしいと連絡を受けたら、その意思に反して送ってはいけません(第3条第3項)。連絡は、止めたい連絡先を明らかにしてもらえば、メールに限らず任意の方法でできます(施行規則第5条)。店に電話で「もう案内はいらない」と言われた場合も、送らない連絡先に入れます。「イベントの案内だけ止めて」のように一部だけ止める連絡もでき、その場合は条件に合うものを送れません。

例外もあります。予約や契約の内容を伝えるなど、広告以外が主な目的のメールに付随して広告が入る場合です(施行規則第6条)。予約の確認の連絡に店の案内が一行入る程度なら、この例外に当たることがあります。ただ、主な目的がイベントの告知なら例外にはなりません。

止める連絡を受けた日と方法は、同意の記録と同じ場所に残しておきます。消費者庁の「法律のポイント」も、後で争いにならないよう記録の保存を勧めています。キャストが個別に送っている客がいる店では、止める連絡をキャスト全員に伝える手順も要ります。

送信者の表示は、店名だけでなく会社名か経営者の氏名が必要

特定電子メールには、受け取った人の画面に次の事項を正しく表示しなければなりません(第4条、施行規則第7条から第9条)。

表示すること表示する場所根拠
送信に責任を持つ者の氏名または名称受信者が容易に気づける場所第4条第1号、規則第7条第1項第1号
受信拒否の連絡を受けるメールアドレスかURL受信者が容易に気づける場所第4条第2号、規則第7条第1項第1号・第8条
受信拒否の連絡ができる旨上の連絡先の直前か直後規則第9条第1号、第7条第1項第2号
送信者の住所任意の場所(リンク先でもよい)規則第9条第2号、第7条第1項第3号
苦情や問合せを受ける電話番号、メールアドレスかURL任意の場所(リンク先でもよい)規則第9条第3号、第7条第1項第3号

水商売の店でつまずきやすいのが、1行目の送信者の名前です。ガイドラインは、表示例の注として次のように書いています。

①の当該送信者の氏名又は名称は、送信者の正式な氏名又は名称でなければならない。サービスを提供しているウェブサイト名、サービス名(例:○○運営事務局)や屋号、ブランド名称の表示では、送信者名を表示したことにはならない。

総務省・消費者庁「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」

客に覚えてもらっている店名を書いただけでは、送信者の表示を満たしません。 会社で営んでいるなら会社名、個人で営んでいるなら経営者の氏名が基本です。個人経営の店で経営者の氏名を出すことに抵抗があるなら、送り方そのものを見直す必要があります。自分の店でどう書くかは、総務省か消費者庁の窓口、または弁護士に確認してください。

SMSは文字数が限られますが、住所と問合せ先はリンク先に置くことが認められています。送信者の名称と、配信を止める連絡先とその旨は、メッセージの本文に入れます。

キャスト個人のスマホから送る営業の連絡と、辞めたキャストの連絡

キャストが自分のスマホから、客にイベントの案内を送る店もあります。ガイドラインは、送信者を「電子メールを発信する操作の主体となる者」、送信委託者を「送信先や送信事項について一定の指示をしている者」と解しています。店が、誰に何を送るかをキャストに指示していれば、店は送信委託者にあたりえます。同意の通知は送信者と送信委託者のどちらが受けてもよく(第3条第1項第1号)、送信委託者が送信の業務の一部を行い、その責めに帰すべき事由がある場合は、措置命令が送信委託者にも及びます(第7条)。

一方で、ガイドラインは単なる私信は特定電子メールに当たらないとしています。キャストが客に送る連絡が、店の営業の宣伝なのか私信なのか。キャストが雇用されているのか、業務委託なのかでも、誰が送信者にあたるかの整理は変わりえます。店としてキャストに客への案内を頼むなら、同意を取った客だけに送る、止める連絡は店に集める、という決まりを先に作っておく方が確実です。個別の判断は弁護士に確認してください。

辞めたキャストが、移った先の店の案内を客に送る場合も考えます。ガイドラインは、同意は通知の相手方となる送信者を本人が認識できる形で取る必要があるとしています。前の店の案内を受け取ることに同意した客に、別の店の宣伝を送れば、その同意の範囲を超えるおそれがあります。店の側では、退店の日に店の顧客名簿や店の端末へのアクセスを止める手順を決めておきます。名簿の持ち出しの罰則は防犯カメラの録画と客の連絡先の管理で扱いました。

客の名前と連絡先は個人情報でもあります。個人情報保護法は、利用目的をできる限り特定し(第17条第1項)、取得したら利用目的を本人に通知か公表すること(第21条第1項)、特定した目的を超えて使うには本人の同意が要ること(第18条第1項)を定めています。顧客カードのように本人から直接書面で連絡先をもらうときは、利用目的をあらかじめ明示します(第21条第2項)。イベントの案内に使うなら、その目的をカードに書いておくと、特定電子メール法の同意と一緒に整えられます。

違反したときの措置命令と罰則

同意のない相手への送信、受信拒否した人への送信、表示義務の違反には、いきなり罰則がかかるわけではありません。総務大臣と内閣総理大臣は、送信者が第3条や第4条を守っていないと認め、電子メールの送受信上の支障を防ぐため必要があるときは、送信の方法を改めるよう命令できます(第7条)。内閣総理大臣の権限は、消費者庁長官に委任されています(第31条第1項)。ガイドラインは、一度の操作で広い範囲の相手に大量に送る場合などを、命令の対象となる典型として挙げています。

違反罰則条文
措置命令に違反した(同意の記録の保存に係る命令を除く)1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金第34条第2号
同意の記録の保存に係る措置命令に違反した100万円以下の罰金第35条第1号
送信に使ったメールアドレスなど、送信者情報を偽って送った1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金第34条第1号
大臣の報告の求めに応じない、または立入検査を拒んだ100万円以下の罰金第35条第2号、第28条第1項

会社の従業者が業務で第34条の違反をすれば、行為者のほかに会社にも3,000万円以下の罰金が科されます(第37条第1号)。受け取った人は、違反があると認めるとき、総務大臣か内閣総理大臣に措置を申し出ることができます(第8条第1項)。迷惑メール相談センターは、特定電子メール法に違反しているSMSの情報提供も受け付けています。

客への誘い方には、特定電子メール法のほかにも決まりがあります。知らない人にSNSで一人ずつ来店を誘う運用は、客引きの問題にもなりえます。その範囲は客引きはどこから違法になるかで扱いました。同意のない相手に送らずに新しい客に届く経路としては、水商売のMEO入門のように、客が自分から店を見つける仕組みを整える方法があります。

今日できる確認

  • 案内を送っている客の連絡先ごとに、同意か名刺など、送ってよい理由を説明できるか
  • 顧客カードやフォームに、送る者の名前と、案内を送ることが分かる文面があるか
  • 送信者の表示が屋号だけになっていないか。配信を止める連絡先とその旨を入れているか
  • 「もう送らないで」と言われた客を記録し、キャストを含めて送らないようにしているか
  • キャストが個人のスマホで案内を送っているなら、店としての決まりを渡しているか

出典

※2026年9月24日に上記資料を確認しました。自分の店の送り方が法律の決まりに合っているか、キャストが送る連絡をどう扱うか、LINE公式アカウントの配信のルールは、総務省・消費者庁の窓口、弁護士、または利用しているサービスの運営会社へ確認してください。

編集部(水商売経営学)

水商売経営学の編集部です。実際に店を回してきた人間と、業界の外から入った編集者で書いています。法律・税務の記事は公的資料を出典として明示します。制度の説明は出典を示して公開し、許可・届出の要否や条文の解釈など「うちの店の場合はどうか」に踏み込む記事は、行政書士・税理士の確認が取れるまで公開しません。取材した店の話は、聞いた範囲のことだけを書きます。個別の判断は店の状況によって変わるため、迷う表現は確認したうえで進めてください。

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