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風営法・許認可

「No.1」が使えなくなった店の広告は、次に何を出せばいいのか

順位も売上も称号も書けない。それでも人は集まります。規制されたのは競争をあおる表現であって、店の魅力そのものではないからです。警察庁の通達が名指しした言葉と、かわりに書けることを整理します。

編集部(水商売経営学)公開 2026年8月1日更新 2026年9月24日8分で読めます
宵の店先でポスターフレームの掲示物を整える手元

この記事の要点

  • 禁止されたのは「順位・称号・支出のあおり」の3つ。事実と人物の情報は書ける
  • 画像の中の文字・当て字・王冠などの装飾に置き換えても、同じ扱いになる
  • 通達の対象は接待飲食営業。屋外の看板だけでなく、営業所内部に掲げた広告物も規制がかかる

店の広告に「No.1」と書けなくなりました。正確には以前から書けなかったのですが、2025年の改正にあわせて警察庁が通達を出し、何が違反にあたるかが具体的に示されたことで、実際に指導が入るようになりました。改正法の施行は2025年6月28日、通達はその直前の6月4日付けです。

いちばん多い相談が「じゃあ何を書けばいいんですか」です。看板もSNSも求人票も、順位と数字で作られてきた業界なので、それを外すと何も残らない気がしてしまう。ですが順位を消しても、選ばれる理由そのものは残ります。

何が禁止されたのか

規制の対象は、大きく分けて次の3つです。細かい条文よりも、この3つの「軸」で覚えたほうが実務では使えます。

  • 順位・成績を示すもの(No.1、売上1億、月間ランキング)
  • 称号のように見えるもの(絶対王者、頂点、神、レジェンド)
  • 好意を利用して支出をあおるもの(君の一杯で順位が変わる、あと少しで達成)

共通しているのは、いずれもお客さんの支出を競争であおる構造だという点です。逆にいえば、競争と切り離された事実であれば書いても問題になりません。

警察庁の通達は、規制違反にあたる表示を4つの類型に分けて、使えない言葉を名指しで挙げています。

(1) 接客従業者の営業成績を直接的に示す文言の表示 例:「年間売上〇億円突破」、「○億円プレイヤー」、「指名数No.1」、「億超え」、「億男」

(2) 営業成績に応じた役職の名称等の営業成績が上位であることを推認させる文言の表示 例:「総支配人」、「幹部補佐」、「頂点」、「winner」、「覇者」、「神」、「レジェンド」、「新人王」

(3) (1)及び(2)以外の「ランキング制」自体の存在、接客従業者間での優位性を裏付ける事実等の接客従業者間の競争を強調する文言の表示 例:「売上バトル」、「カネ」、「SNS総フォロワー数○万人」

(4) 客に対して自身が好意の感情を抱く接客従業者を応援すること等を過度にあおる文言の表示 例:「○○を推せ」、「○○に溺れろ」

警察庁「接待飲食営業における広告及び宣伝の取扱いについて」(令和7年6月4日付け丁保発第104号)

役職名まで挙がっているところは見落とされがちです。「総支配人」「幹部補佐」は店内の呼び名として使ってきた店が多いはずですが、営業成績が上位であることを推認させるものとして名指しされています。

ここを間違える店が多い

「文言を弱めれば大丈夫」ではありません。文字を画像の中に入れる、英語にする、当て字や伏せ字にするといった置き換えも同じ扱いです。王冠・表彰台・トロフィー、売上グラフや達成メーターのように、ビジュアルだけで同じ圧力を出す表現も認められません。

この通達が運用方針を示しているのは、風俗営業のうち接待飲食営業です。接待をしていない店は、この通達が直接の対象ではありません。ただし広告と宣伝の規制そのもの(風営法第16条)は風俗営業者にかかります。自分の店がどの区分にあたるかは開業で必要な手続きの一覧で確認できます。

画像や当て字に置き換えても逃げられない

通達が問題にしているのは、言葉そのものより「著しく客の遊興若しくは飲食をする意欲をそそり、又は接客従業者間に過度な競争意識を生じさせ」る状態です。文字を消して王冠のイラストや金額の入ったグラフに置き換えても、読み手に同じ印象を与えるなら、その状態は変わりません。

なお通達は、屋外の看板だけを見ているわけではありません。営業所の内部に掲げた広告物も、風営法施行規則第7条の技術上の基準(善良の風俗または清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと)と、法第12条の構造・設備の維持義務にかかります。店内のポスターやボードも見直す対象です。

SNSはどうなるのか、という質問をよく受けます。通達が「広告物」として定義しているのは、看板、立看板、はり紙、はり札、広告塔、広告板などで、SNSの投稿そのものが含まれるとは書かれていません。一方で、規制の根拠である法第16条は「広告又は宣伝」を対象としていて、媒体を限定していません。通達の類型にも「SNS総フォロワー数○万人」が例示されています。断定できる状態ではないので、安全側に倒して同じ基準で見ておくのが実務的です。

では何を書けばいいのか

店内の雰囲気や人物、料金を軸にした広告案を確認する手元
順位や売上ではなく、雰囲気・人物・利用情報を来店判断の材料として見せる

軸を「成績・競争」から「事実・人物・利用情報」へ移します。この3つは規制の対象外であり、しかも実際にお客さんが知りたいことでもあります。キャストの写真を載せるときに取っておく同意は、キャストの写真をSNSや求人に載せるときで確認できます。

これまで書いていたこと書き換え先
指名数No.1/年間売上1億落ち着いた会話を大切にしています/2026年在籍
絶対王者・神・レジェンド氏名・趣味・得意な話題・接客のスタイル
ランキング表・売上バトル合同イベントの告知・出演予定
札束や金額の誇示店内の空間・照明・座席の紹介
必須の追加費用を小さく書く基本料から合計見込額までを同じ画面に

判断に迷うところ

通達の類型を読むと、迷いやすいのは次のあたりです。いずれも「営業成績を示すか、競争を強調するか」で分かれます。

書きたいこと通達の類型に照らすと
店内の役職名(総支配人・幹部補佐)(2)に名指しされている。営業成績が上位であることを推認させる文言として扱われる
在籍年数(2020年から在籍)営業成績でも競争でもない。(1)〜(4)のどれにも当たらない
SNSのフォロワー数(3)に「SNS総フォロワー数○万人」が例示されている
イベントの出演予定出演の事実だけなら成績を示さない。ただし「動員数」「売上目標」を添えると(1)(3)に近づく
「〇〇を応援してください」(4)は「過度にあおる文言」を対象にしている。「○○を推せ」「○○に溺れろ」が例示されている

判断が分かれる表現は、出す前に管轄の警察署へ確認するのが確実です。通達は、各都道府県警察が行政処分を行おうとする場合は当分の間あらかじめ警察庁と調整することとしており、運用がそろうまでには時間がかかります。

今日できる確認

順位や売上を書けなくなったぶん、何で見つけてもらうかを設計し直す必要があります。費用をかけずに始められるところは水商売のMEO入門にまとめました。

まず、いま出しているものを全部並べてください。看板、店内のポスター、Instagram、求人媒体、名刺。そのうえで、次の順に見ていきます。

  • 順位・成績・称号にあたる言葉が入っていないか(画像の中も含めて)
  • 王冠・表彰台・グラフ・札束のような、競争を思わせる装飾がないか
  • 料金の表示が、追加費用まで含めて同じ画面で読めるか

違反が認められると、まず是正の行政指導が入ります。指導に従わない場合は、風営法第25条にもとづく指示処分等が検討されることになります。

出典

編集部(水商売経営学)

水商売経営学の編集部です。実際に店を回してきた人間と、業界の外から入った編集者で書いています。法律・税務の記事は公的資料を出典として明示します。制度の説明は出典を示して公開し、許可・届出の要否や条文の解釈など「うちの店の場合はどうか」に踏み込む記事は、行政書士・税理士の確認が取れるまで公開しません。取材した店の話は、聞いた範囲のことだけを書きます。個別の判断は店の状況によって変わるため、迷う表現は確認したうえで進めてください。

この記事は2026年9月24日に更新しました(書き換え表に料金表示の項目を追加)。

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