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風営法・許認可

色恋営業は何が禁止されたのか。2025年改正の風営法第18条の3と、ホストクラブやキャバクラが店で決めておくこと

「別れたくないならシャンパン入れて」。警察庁のポスターが例に挙げる、いわゆる色恋営業の言い方です。こうした営業は、2025年の風営法改正で、接待をする店がしてはならない行為として条文に書かれました。ホストクラブだけでなく、キャバクラやラウンジなど接待をする店すべてにかかります。この記事では、何が禁止されたのか、キャストが言ったことで店がどんな処分を受けうるのかを、条文と警察庁の基準で確認します。

編集部(水商売経営学)公開 2026年9月24日13分で読めます
宵の店のテーブルで、黒いスーツの袖の手元がメニュー表を客に向けて差し出し、客は膝の上で手を重ねている

この記事の要点

  • 2025年6月28日に施行された風営法第18条の3第2号は、接待をする店(1号営業)の風俗営業者に、客の恋愛感情などにつけ込み、関係が破綻する、降格などの不利益を受けると告げて客を困惑させ、飲食などをさせることを禁止している
  • 警察庁の基準では、好意の感情には憧れの感情も含まれ、いわゆる推し活の客への行為も対象になりうる。条文の「風俗営業者」にはキャストなどの代理人等が含まれ、業務の一部を委託された人もこれに含まれる
  • 第18条の3の違反に罰則の定めはないが、公安委員会の指示、6月以内の営業停止、許可の取消しの対象になる(第25条・第26条)。処分を受けるのは店を営む風俗営業者

担当のキャストが、来店の少ない客に「このままだと会えなくなる」とメッセージを送る。売上の締め日に「今月いかないと降格なんだ」と頼む。どちらも、2025年の改正のあとは、店として放っておけない言い方です。

2025年の風営法改正で、客の恋愛感情などにつけ込んで飲食をさせる行為が、店がしてはならないこととして条文に入りました。この記事では、第18条の3の中身と警察庁の解釈運用基準、違反したときの処分、店で決めておく接客のルールを確認します。

2025年6月施行の改正で、恋愛感情につけ込む営業が禁止された

改正の背景は、警察庁の資料に書かれています。ホストクラブで遊興や飲食をした女性客が、売掛金などの名目で多額の債務を負わされ、その支払いのために売春や性風俗店での勤務を求められる事案が社会問題になった、というものです。

改正法では、接待をする店の風俗営業者がしてはならない行為として、第18条の3が加わりました。料金の虚偽説明(第1号)、客の恋愛感情などにつけ込んだ飲食などの要求(第2号)、客が注文していない飲食などの提供(第3号)の3つです。施行は2025年6月28日です。

対象は、第2条第1項第1号の営業、つまり設備を設けて客の接待をして遊興や飲食をさせる営業です。警察庁の広報ポスターも、ホストクラブだけでなく、メンズコンセプトカフェ、キャバクラ、クラブなど客の接待をする営業全体にかかると明記しています。第1号と第3号は会計のトラブルに近い話なので、会計トラブルで店がしてはいけないことで扱っています。ここでは第2号に絞ります。ホストクラブを開くときの許可と手続きの全体は、ホストクラブ開業の許可一覧で確認できます。

第18条の3第2号が禁止している行為の要件

条文は次のとおりです。

第二条第一項第一号の営業を営む風俗営業者は、その営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない。 (中略) 二 客が、接客従業者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該接客従業者も当該客に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、次に掲げる行為により当該客を困惑させ、それによつて遊興又は飲食をさせること。 イ 当該客が遊興又は飲食をしなければ当該接客従業者との関係が破綻することになる旨を告げること。 ロ 当該接客従業者がその意に反して受ける降格、配置転換その他の業務上の不利益を回避するためには、当該客が遊興又は飲食をすることが必要不可欠である旨を告げること。 (後略)

風営法 第18条の3

条文はいくつかの要素を重ねています。警察庁の解釈運用基準(第17の7(3))の説明と並べると、次のようになります。

条文の要素警察庁の基準の説明
客が恋愛感情その他の好意の感情を抱いている好きな気持ち、親愛感。恋愛感情のほか、憧れの感情なども含む
接客従業者も同様の感情を抱いていると、客が誤信している客と同じ感情である必要はなく、客の感情に相応する程度の感情を抱いていると誤信していれば当たる
それを知りながら、これに乗じる誤信している状態を利用し、つけ込むこと
イ 飲食しなければ関係が破綻すると告げる/ロ 降格などの不利益を避けるには飲食が必要不可欠と告げるロの不利益には、店の中の序列の降格、遠隔地への左遷、減給や報酬の減額がある。「必要不可欠」という言葉そのものでなくても、全体として同じ程度の必要性と切迫性が示されていれば含む
客を困惑させ、遊興や飲食をさせる困り戸惑い、どうしてよいか分からなくなるような、精神的に自由な判断ができない状況。畏怖している状況も含む

警察庁のポスターは、好意につけ込む営業の例として「別れたくないならシャンパン入れて」と言われた場面を描いています。イの「関係が破綻する」は、この種の言い方を指しています。

恋愛感情だけでなく、憧れや推し活も含まれるのか

恋愛感情だけの話ではありません。基準は、好意の感情を広く説明しています。

法第18条の3第2号中「恋愛感情その他の好意の感情」とは、好きな気持ち、親愛感のことをいい、例示として挙げられている恋愛感情のほか、憧れの感情等も含まれる。

警察庁「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について」(令和8年7月1日)第17の7(3)ア

同じ箇所で、基準はいわゆる推し活にも触れています。推し活の一環として接客従業者に好意を抱く客への行為も、要件を満たせば第2号の違反になるとしています。恋人のような関係を装っていないから関係ない、とは言えません。

「本気で好きだった」という言い分についても、基準は書いています。客に同じ感情を抱いていると思わせる言動をしながらイやロの行為をした場合は、客の好意と誤信を知ったうえで利用する意図があったと推認されます。複数の客に好意を抱いていると思わせる言動をしながら営業していたことなどが認定されれば、真実の好意はなかったと推認できる、ともしています。

「売上が足りないと降格」と客に頼む営業も、違反になりうる

店にとって見落としやすいのが、第2号ロです。キャストが「今月の売上が足りないと降格される」「指名が取れないと給料が下がる」と客に告げ、それを避けるには客の飲食が欠かせないと伝える形です。

基準は、ロの不利益に、店の中の序列の降格や減給、報酬の減額を挙げています。売上や指名で順位や報酬が決まる仕組みの店では、キャストがその事情を客への頼みごとに使える状態にあります。仕組みそのものを条文が禁止しているわけではありません。問題になるのは、その不利益を客に告げて、困惑させて飲食させることです。

広告や宣伝も関わります。基準は、第18条の3の趣旨に照らし、接客従業者の指名数や売上額、役職をことさら強調するような広告や宣伝も、第16条の規制の対象になるとしています。広告の表現は「No.1」が使えなくなった店の広告にまとめました。

キャストが勝手に言った場合でも、店が処分を受けるのか

受けうる、というのが条文と基準の組み立てです。第18条の3の主語は「風俗営業者」ですが、基準はここに代理人等が含まれると書いています。

なお、法第18条の3柱書きの「風俗営業者」には、その代理人等が含まれることから、接待飲食営業を営む風俗営業者又はその代理人等に該当する接客従業者が客の好意の感情及び誤信を知りながらこれを利用する意図があったかどうかを認定することとなる。

警察庁「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について」(令和8年7月1日)第17の7(3)ウ

代理人等とは、風俗営業者の代理人、使用人その他の従業者です(法第24条第3項)。基準は、ここに風俗営業者から業務の一部の委託を受けた人も含むとしています。雇用契約のキャストに限らず、業務委託のキャストでも、店の代理人等として扱われうるということです。

さらに基準は、代理人等が自分の目的のために立場を濫用した場合でも、そうした行為ができる立場に置かれている以上、営業に関して行ったものと認められると説明しています。キャストが勝手に言ったことでも、処分を受けるのは店を営む風俗営業者です。

違反したときは刑罰ではなく、指示や営業停止などの行政処分

第18条の3は、改正で「遵守事項」として置かれた規定です。罰則を定めた第49条から第58条までに、第18条の3は出てきません。違反すると、公安委員会の行政処分の対象になります。

違反の内容根拠罰則・処分
恋愛感情などにつけ込んだ飲食などの要求(第18条の3第2号)第25条・第26条罰則の定めはない。指示、6月以内の営業の全部か一部の停止、許可の取消し
許可の取消しや営業停止を受けたとき第26条第2項同じ施設で営む飲食店営業も、6月以内(停止のときはその期間)の営業停止を命じられうる
注文や料金の支払いをさせる目的で客を威迫して困惑させる(第22条の2第1号)第53条第2号・第57条6月以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、併科あり。法人なども罰金

許可を取り消されると、取消しの日から5年間は風俗営業の許可を受けられません(法第4条第1項第6号)。警察庁は、改正で新設された遵守事項への違反について、効果的な指示処分を的確に行うよう各都道府県警察に通達しています(令和7年6月4日)。

客の側から見た決まりもあります。消費者契約法第4条第3項第6号は、社会生活上の経験が乏しい消費者が勧誘者に好意を抱き、相手も同じだと誤信していることを知りながら、契約しなければ関係が破綻すると告げる勧誘を、取消しの対象にしています。警察庁のページも、ホストクラブなどで好意の感情を不当に利用した契約は、要件に該当すれば後から取り消せると案内しています。

売掛の回収と、キャストに売掛を負わせる問題は客の売掛(ツケ)を店はどう扱うかに書きました。客からキャストへのセクハラやつきまといは、この記事とは向きが逆の話です。店がキャストを守る決めごとは客からのセクハラやつきまといからキャストを守る店の決めごとにまとめています。

店で決めておく4つの接客のルール

条文は店の中の決めごとまでは書いていません。ここからは、条文と基準を踏まえて、店として先に決めておけることです。

一つ目は、言い方の指導です。「会いたいなら注文して」「入れてくれないと終わり」「今月いかないと降格」のように、関係が切れることや自分の不利益を注文と結びつける言い方をしない、と具体的な言葉でキャストに伝えます。店内の接客だけでなく、LINEやSNSでのやり取りも含めて伝えておきます。

二つ目は、注文の意思の確認です。ボトルを開ける前、シャンパンコールをする前に、客本人が注文すると言ったかを確かめる手順にします。注文前の提供は第18条の3第3号の禁止にも関わります。

三つ目は、客の上限です。「今日は1万円まで」と客が言ったら、その範囲を守る。上限を聞いて「大丈夫」と返し、会計で超える形は、基準が第1号の「誤認させるような説明」の例に挙げています。

四つ目は、記録です。風俗営業者は営業所ごとに管理者を選任し(法第24条第1項)、管理者は従業者への指導の計画を作り、実地に指導し、その記録を作ることになっています(施行規則第38条第1号)。色恋営業の禁止を指導の項目に入れ、いつ誰に伝えたかを残します。立入のときに見られる記録は警察の立入で何を見られるのかで確認できます。

どの言い方が違反にあたるか、この接客は大丈夫か、という個別の判断は、この記事ではしません。具体的なやり取りを持って、管轄の警察署、行政書士、弁護士に確認してください。

今日できる確認

  • 店が接待をする営業(1号営業)で、第18条の3の対象になるかを把握しているか
  • 関係が切れることや降格・減給を持ち出して注文を頼む言い方をしないよう、キャストに具体的な言葉で伝えたか
  • 業務委託のキャストにも、同じルールを伝えているか
  • ボトルやシャンパンコールの前に、客本人の注文を確かめる手順になっているか
  • 管理者が従業者への指導の計画を作り、指導した日と内容を記録しているか

出典

※2026年9月24日に上記資料を確認しました。自分の店の接客や言い方が第18条の3にあたるかは、具体的なやり取りを持って管轄の警察署、行政書士、弁護士へ確認してください。

編集部(水商売経営学)

水商売経営学の編集部です。実際に店を回してきた人間と、業界の外から入った編集者で書いています。法律・税務の記事は公的資料を出典として明示します。制度の説明は出典を示して公開し、許可・届出の要否や条文の解釈など「うちの店の場合はどうか」に踏み込む記事は、行政書士・税理士の確認が取れるまで公開しません。取材した店の話は、聞いた範囲のことだけを書きます。個別の判断は店の状況によって変わるため、迷う表現は確認したうえで進めてください。

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