
この記事の要点
- 設備を設けて客に飲食させる営業は、食品衛生法の飲食店営業にあたり、保健所の許可が要る。既製品のつまみを盛る、瓶の酒を出すといった簡易な営業も飲食店営業に含まれ、施設基準の一部が緩和される
- 許可を受けた店は、食品衛生責任者を定め、HACCPに沿った衛生管理(衛生管理計画・記録・見直し)を続ける。飲食店営業は、手引書を使った簡略化した方法で取り組める
- 許可には5年を下らない有効期間が付く。東京都では満了日の約1か月前に継続申請をし、変更届と廃業届は10日以内。無許可営業は2年以下の拘禁刑か200万円以下の罰金
「料理は出さない。酒と乾き物だけの店でも、保健所の許可は要るのか」。スナックやバーの開業準備で、最初に迷いやすいところです。警察への届出や風営法の許可と混ざって、どの窓口で何をするのかが見えにくくなります。
この記事では、食品衛生法の飲食店営業許可について、許可が要る範囲、施設の基準、食品衛生責任者、HACCPに沿った衛生管理、許可の期限と届出、罰則を、法令と厚生労働省・東京都の資料で確認します。期限や様式は自治体で違うため、東京都の例で書いています。
お酒や乾き物を出すだけの店も、飲食店営業の許可が必要
食品衛生法第55条第1項は、政令で定める営業を営もうとする者に、都道府県知事の許可を求めています。その営業の最初に挙がっているのが飲食店営業です(食品衛生法施行令第35条第1号)。飲食店営業は「食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業」と定義されています(同施行令第34条の2第2号)。
料理を作らない店でも、席やカウンターを設けて客に飲ませるなら、この定義に入ります。厚生労働省は、調理が簡単な店の扱いを次のように示しています。
飲食店営業のうち、次に掲げる簡易な営業については、飲食店営業の施設基準を一部緩和する。簡易な飲食店営業の対象となる調理の具体例としては、以下のとおりである。 (ⅰ) 既製品(そのまま喫食可能な食品)を開封、加温、盛り付け等して提供する営業(食品例:そうざい、ハム、ソーセージ、スナック菓子、缶詰、おでん等) (中略) (ⅳ) 既製品(清涼飲料水、アルコール飲料等)及び既製品以外の自家製ジュース、コーヒー等の飲料を提供する営業
厚生労働省「営業許可業種の解説」(飲食店営業)
乾き物や瓶の酒だけの店は、許可が要らない店ではなく、飲食店営業のうち施設基準が一部緩和される「簡易な営業」にあたります。 許可の申請そのものは必要です。
店で果物を切る、製氷機で氷を作る、自家製のシロップを仕込む。こうした作業がこの例のどこに入るかは、今回確認した資料からは読み取れませんでした。出すメニューと作り方を書き出して、管轄の保健所に確認してください。
風営法の許可や深夜酒類の届出とは別に、保健所の許可が要る
保健所の許可と、警察の手続きは別物です。風営法は、深夜酒類提供飲食店営業の前提になる「飲食店営業」を、食品衛生法第55条第1項の許可を受けて営むものと定義しています(風営法第2条第13項第4号)。午前0時以降に酒を出すバーやガールズバーの届出は、保健所の許可があって成り立つということです。届出の進め方は深夜酒類提供飲食店営業の届出の手順にまとめました。
接待をするスナックやラウンジは風営法の許可を取りますが、客に飲食をさせる以上、食品衛生法の許可は別に要ります。業態ごとの手続きの全体は、スナック開業の許可一覧、ガールズバー開業の許可一覧、ラウンジ開業の許可一覧、コンカフェ開業の許可一覧で整理しています。
酒のボトルを客に持ち帰りで売る場合は、さらに別の話になります。酒税法第9条第1項は、酒類の販売業をするには販売場ごとに税務署長の免許が要るとし、酒場や料理店など、酒をもっぱら自分の営業場で飲ませる業はその対象外としています。店内で飲ませる以外の売り方を考えているなら、所轄の税務署に確認してください。免許が要る場面と申請の条件は、お酒を持ち帰り用に売るにはにまとめています。
施設の基準は都道府県の条例で決まり、簡易な営業では一部緩和される
許可が下りるかどうかは、店の施設が基準に合うかで決まります。基準は都道府県が条例で定め(食品衛生法第54条)、知事は施設が基準に合うと認めれば許可をしなければなりません(同法第55条第2項)。条例のもとになる国の基準は、食品衛生法施行規則の別表第19(全業種に共通)と別表第20(業種ごと)です。東京都は食品衛生法施行条例の別表第2に定めています。
飲食店で図面に関わる主な項目と、簡易な営業で緩和されうる点を並べると次のとおりです。
| 共通の基準(施行規則別表第19) | 簡易な営業での扱い(同表第5号ロ) |
|---|---|
| 従業者の手指を洗浄消毒する装置を備えた流水式手洗い設備を必要な個数 | 緩和の対象に挙がっていない |
| 床面は不浸透性で排水が良好、内壁は腰張り(清掃に水が要る施設) | 支障がないと認められれば、不浸透性以外の材料も可 |
| 水で洗う区画などの床面に排水設備 | 支障がないと認められれば、床面になくてよい |
| 必要に応じて冷蔵・冷凍設備 | 支障がないと認められれば、施設の外でも可 |
| 作業区分に応じた区画。住居など食品を扱わない場所とも区画 | 食品を扱う区域は、従業者以外が容易に立ち入れない構造なら、区画を要しないとできる |
| 専用の流水式手洗い設備がある便所を、従業者の数に応じて | 緩和の対象に挙がっていない |
床や排水、冷蔵設備の緩和は「食品衛生上支障がないと認められる場合」に限られます。自分の店で緩和が使えるかは、先に決めつけないほうが安全です。カウンターの内側の手洗いとシンクの数、冷蔵庫の置き場所は、内装の図面ができた段階で保健所に見せてください。
東京都の場合、申請書類は施設工事の完成予定日の10日くらい前に保健所へ出します。必要なのは、申請書、施設の構造と設備を示す図面2通、食品衛生責任者の資格を証明するもの、手数料などです。申請か施設の検査のときに、衛生管理計画も確認されます。特別区と八王子市・町田市の保健所は様式などが異なるため、事前に各保健所へ問い合わせるよう都は案内しています。
食品衛生責任者になれる人の条件と、資格の取り方
許可を受けた店は、食品衛生責任者を定めます。
法第五十一条第一項に規定する営業を行う者(法第六十八条第三項において準用する場合を含む。以下この表において「営業者」という。)は、食品衛生責任者を定めること。(後略)
食品衛生法施行規則 別表第17 第1号イ
なれるのは、調理師、製菓衛生師、栄養士、管理栄養士などの資格を持つ人か、都道府県知事等が行う講習会や知事等が適正と認める講習会を受講した人です(同表第1号ロ)。東京都では、一般社団法人東京都食品衛生協会が計6時間程度の養成講習会を行っています。都によれば、平成9年4月1日以降の修了証書は全国どこでも有効です。
許可の申請書には、食品衛生責任者の氏名と資格の種類、受講した講習会を書きます(施行規則第67条第4号)。食品衛生責任者は営業者の指示に従って衛生管理にあたり、定期的に講習会を受けて新しい知見の習得に努めます。営業者の側は、その意見を尊重しなければなりません(別表第17第1号ハ・ニ)。責任者にした人が店を辞めたら、次の人を決めて変更の届出をします。
飲食店に求められる「HACCPに沿った衛生管理」とは
食品衛生法第51条第2項は、営業者に、国の基準に従って衛生上必要な措置を定め、守ることを求めています。施行規則はその中身を次のように書いています。
一 食品衛生上の危害の発生の防止のため、施設の衛生管理及び食品又は添加物の取扱い等に関する計画(以下「衛生管理計画」という。)を作成し、食品又は添加物を取り扱う者及び関係者に周知徹底を図ること。 (中略) 三 衛生管理の実施状況を記録し、保存すること。なお、記録の保存期間は、取り扱う食品又は添加物が使用され、又は消費されるまでの期間を踏まえ、合理的に設定すること。 四 衛生管理計画及び手順書の効果を検証し、必要に応じてその内容を見直すこと。
食品衛生法施行規則 第66条の2第3項
飲食店営業を行う者は、政令と施行規則で「小規模な営業者等」に入ります(施行令第34条の2第2号、施行規則第66条の3第1号)。店の規模にかかわらず、取り扱う食品の特性に応じた簡略化した取組でよい、ということです(施行規則別表第18第8号)。厚生労働省はこれを「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」と呼んでいます。
厚生労働省の資料では、小規模な営業者等は、業界団体が作り国が内容を確認した手引書を使って、次のことをしていれば基準を守っているとみなされます。
- 手引書を読み、自分の業態で何が危害の原因になるかを理解する
- 手引書のひな形で、衛生管理計画と、必要に応じて手順書を用意する
- その内容を従業員に周知する
- 手引書の記録様式で実施状況を記録し、推奨された期間保存する
- 記録を定期的に振り返り、必要に応じて計画や手順書を見直す
厚生労働省の飲食店向けリーフレットの記録表の例には、冷蔵庫・冷凍庫の温度、器具の洗浄・消毒、トイレの清掃、従業員の健康や手洗いといった項目が並びます。この措置に違反すると、許可の取消しや営業の禁止・停止の処分の対象になりえます(食品衛生法第60条第1項)。
営業許可の有効期間と更新。東京都では満了の約1か月前に継続申請
知事は、許可に5年を下らない有効期間などの条件を付けることができます(食品衛生法第55条第3項)。自分の店の満了日は、手元の営業許可書で確認してください。
東京都は、満了後も営業を続けるなら、許可満了日の約1か月前に継続申請をするよう案内しています。持っていくのは、申請書、現在の営業許可書(施設の図面が付いたもの)、食品衛生責任者の資格を証明するもの、手数料などです。都の手数料表(令和8年4月1日から適用)では、飲食店営業の新規が18,000円、継続が8,900円です。満了までに保健所の職員が店に来て施設基準に合っているかを確かめ、合っていなければ改善したうえで再検査になると、都の南多摩保健所は説明しています。
令和3年5月31日以前に取った許可(旧制度の許可)で営業している店は、その有効期間の満了までに、新しい制度で新規の許可申請をして施設の検査を受ける必要があると、東京都のリーフレットは説明しています。
責任者の変更や廃業の届出は、東京都では10日以内
許可を取ったあとに申請内容が変わったときは、保健所に届け出ます。施行規則は変更を「速やかに」、廃業も届け出るよう定め(第71条、第71条の2)、東京都の食品衛生法施行細則はどちらも10日以内としています(第21条、第22条)。新宿区も同じ期限を案内しています。
| 出来事 | 東京都での手続き | 期限 |
|---|---|---|
| 食品衛生責任者、屋号、法人の代表者、営業設備などが変わった | 変更届(設備なら図面、責任者なら資格証明などを添付) | 変更のあった日から10日以内 |
| 営業を譲り受けた、相続した、法人が合併・分割した | 地位承継届(施行規則第67条の2〜第70条) | 遅滞なく |
| 店を閉めた | 廃業届 | 廃業した日から10日以内 |
| 店を移転した、営業者が変わった | 廃業届と、新たな許可の新規申請 | 廃業届は10日以内 |
都は、変更の程度によっては新規の許可申請が要る場合があるとして、事前の相談を求めています。改装や、個人から法人への切り替えを考えているなら、工事や契約の前に保健所へ話してください。風営法の許可を取っている店は、警察への変更届も別にあります。そちらは風俗営業の許可を取ったあとに続く手続きにまとめました。
無許可営業や施設基準違反の罰則と行政処分
食品衛生法の罰則のうち、店の許可に関わるものは次のとおりです。
| 違反 | 罰則 | 条文 |
|---|---|---|
| 許可を受けずに営業した | 2年以下の拘禁刑か200万円以下の罰金(併科あり) | 第82条 |
| 施設の基準や、許可に付いた条件に違反した | 1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金 | 第83条第4号 |
| 施設の改善命令に従わない、処分に違反して営業した(第61条) | 1年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金 | 第83条第5号 |
| 許可の取消しや営業停止などの処分(第60条)に違反して営業した | 3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金(併科あり) | 第81条第1項第3号 |
従業者が店の業務として違反したときは、行為者のほかに、法人や個人事業主にも罰金が科されます(第88条)。
刑事罰とは別に、知事は、施設が基準に合わない店に改善を命じ、許可の取消しや営業の禁止・停止ができます(第61条)。許可を取り消された者は、取消しの日から2年を経過するまで、許可を与えないことができるとされています(第55条第2項第2号)。
今日できる確認
- 営業許可書の満了日を確かめ、東京都なら約1か月前に継続申請の予定を入れたか
- 食品衛生責任者が誰になっているか。その人が辞めていれば、変更届を出したか
- 衛生管理計画と記録表があり、冷蔵庫の温度や清掃の記録が続いているか
- 屋号、法人の代表者、設備を変えたのに、届け出ていないものがないか
- 果物を切る、氷を作るなど、既製品を出す以外の作業を始める前に、保健所に伝えたか
出典
- 食品衛生法(e-Gov法令検索。第51条が衛生管理の措置、第54条が施設基準、第55条が営業許可と有効期間、第56条が地位の承継、第60条・第61条が処分、第81条〜第83条・第88条が罰則)
- 食品衛生法施行令(e-Gov法令検索。第34条の2が飲食店営業の定義と小規模な営業者等、第35条が許可の要る営業)
- 食品衛生法施行規則(e-Gov法令検索。第66条の2・第66条の3が衛生管理、第67条が許可の申請事項、第71条・第71条の2が変更と廃業の届出、別表第17が食品衛生責任者、別表第18・第19が衛生管理と施設の基準)
- 厚生労働省「営業許可業種の解説」(PDF。飲食店営業の定義と、簡易な営業の具体例)
- 厚生労働省「HACCPに沿った衛生管理の制度化について」(制度の対象と営業者が実施すること。制度の全体像のPDFに小規模な営業者等の取組)
- 厚生労働省「飲食店における衛生管理」リーフレット(PDF。衛生管理計画と記録表の例)
- 東京都保健医療局「営業許可・届出の概要」(新規・継続申請の時期と書類、変更届・廃業届・地位承継届)
- 東京都保健医療局「食品衛生責任者」(養成講習会の内容と時間、受講免除の資格)
- 東京都 食品衛生法施行細則(東京都例規集。第21条が変更届、第22条が廃業届の期限)
- 東京都 食品衛生法施行条例(東京都例規集。別表第2が営業施設の基準)
- 東京都「食品衛生関係許可手数料」(PDF。令和8年4月1日から適用の手数料)
- 東京都「新たな営業の許可制度・営業の届出制度」リーフレット(PDF。旧制度の許可から新制度への移行)
- 東京都南多摩保健所「営業許可期限満了時の手続きについて」(継続申請の時期、満了前の施設の確認と再検査)
- 新宿区「営業許可等の手続きについて」(継続申請と、変更届・廃業届の期限)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索。第2条第13項第4号が飲食店営業の定義)
- 酒税法(e-Gov法令検索。第9条第1項が酒類の販売業免許)
※2026年9月24日に上記資料を確認しました。自分の店のメニューや設備で許可の区分や施設基準がどうなるか、届出が必要かは、店の所在地を管轄する保健所へ確認してください。酒の持ち帰り販売は、所轄の税務署へ確認してください。






