
この記事の要点
- 著作権法第22条は、音楽を公衆に聞かせる目的で演奏する権利を著作者に与えている。演奏には歌唱と、録音物の再生も含まれる(第2条第1項第16号・第2条第7項)
- 最高裁昭和63年3月15日判決は、カラオケ装置を置いて客に歌わせるスナック等の経営者を歌唱の主体とし、許諾のない営業は演奏権の侵害とした。JASRACも、店での歌唱部分の手続きは店舗経営者がするものと案内している
- 非営利・無料・無報酬の例外(第38条第1項)は、店の営業には使いにくい。JASRACと契約した有線放送などのBGMは音源提供事業者が使用料を払うが、CDの再生や生演奏、カラオケは店の手続きが要る。無許諾の侵害は10年以下の拘禁刑か1,000万円以下の罰金(併科あり)、法人は3億円以下の罰金
店にカラオケを入れたとき、通信カラオケの会社と契約して、月々の料金を払う。BGMは有線を引くか、スマートフォンから流す。周年イベントでは、知り合いのバンドやDJに来てもらう。どれも水商売の店ではよくある音楽の使い方です。
ただ、機械の料金を払っていることと、曲の著作権の手続きが済んでいることは別の話です。この記事では、店で音楽を使うときにかかる著作権の決まりを、著作権法の条文、最高裁判所の判決、JASRACと文化庁の資料で確認します。
CDの再生やキャストの歌唱も、著作権法上の「演奏」にあたる
店の中で音楽を使うときに関係するのは、著作権法第22条の演奏権です。
著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。
著作権法 第22条
ここでいう「演奏」は、楽器を弾くことだけではありません。著作権法は定義の中で「演奏(歌唱を含む。以下同じ。)」と書いています(第2条第1項第16号)。さらに第2条第7項は、録音されたものを再生することも演奏に含むと定めています。キャストが歌うことも、CDや音源を店で流すことも、条文の上では演奏です。
「公衆」には、特定かつ多数の者も含まれます(第2条第5項)。会員制の店だから公衆ではない、とは言い切れません。客に聞かせるために店で音楽を使うなら、演奏権が働く前提で考えます。
客が歌うカラオケでも、店の責任が問われた最高裁判決
カラオケで歌っているのは客です。それでも店の経営者が責任を問われた判決があります。最高裁判所第三小法廷の昭和63年3月15日判決(昭和59年(オ)第1204号)です。
事案は、スナック等でカラオケ装置と曲の入ったカラオケテープを置き、ホステス等の従業員が装置を操作して客に歌を勧めていたというものです。判決は次のように述べています。
かかる事実関係のもとにおいては、ホステス等が歌唱する場合はもちろん、客が歌唱する場合を含めて、演奏(歌唱)という形態による当該音楽著作物の利用主体は上告人らであり、かつ、その演奏は営利を目的として公にされたものであるというべきである。
最高裁判所第三小法廷 昭和63年3月15日判決(昭和59(オ)1204)
理由として判決は、客が店の従業員の勧めや店の備えたテープの範囲内での選曲を通じて、店の管理のもとで歌っていることを挙げています。店は客の歌唱を営業政策の一環として取り入れ、利益を増やそうとしていたとも述べています。そのうえで、許諾を得ずに歌わせることは演奏権の侵害で、店が不法行為の責任を免れないとしました。
判決当時は、適法に録音された音楽の再生を一定の範囲で自由にする経過規定(附則第14条)がありました。現在の著作権法では、この条は「削除」となっています。なお、判決はホステス等を店の従業員として扱っています。業務委託のキャストが歌う場合にどう見られるかは、契約と店での関わり方の実態で変わりうるので、JASRACか弁護士に確認してください。
カラオケ代や入場料を取っていなくても、非営利の例外に頼るのは難しい
著作権法には、許諾なしで演奏できる例外があります。第38条第1項です。
公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。
著作権法 第38条第1項
条件は3つそろって初めて満たされます。営利を目的としないこと、聴衆から料金を受けないこと、演奏する人に報酬を払わないことです。文化庁の著作権テキストは、この例外を学校の学芸会や公民館での上映会のような場面の例外として説明しています。
「営利」について、文化庁の著作権テキストは第38条の説明の中で「反復継続して、その著作物の利用行為自体から直接的に利益を得る場合又はその行為が間接的に利益に具体的に寄与していると認められる場合」と説明しています。上の最高裁判決も、店のカラオケでの歌唱を「営利を目的として公にされたもの」としました。カラオケ代や入場料を別に取っていなくても、店の営業として音楽を使う以上、この例外に頼るのは難しいと考えておくのが安全です。
通信カラオケの契約とは別に、店がJASRACへ手続きをする
JASRACは、店のカラオケについて、通信カラオケ事業者と店舗経営者で手続きを分けています。事業者は楽曲データを店の受信装置へ送信・複製するまでの利用について、店舗経営者は店での歌唱部分について手続きをする、という説明です。機械と曲のデータの料金を通信カラオケの会社に払っていても、店で歌う部分の手続きをするのは店の経営者です。
バーやスナックでの歌唱は、JASRACの使用料規程の「社交場における演奏等」で扱われます。規程は社交場を、ライブハウス、キャバレー、ディスコ、バー、スナック、旅館など、設備を設けて客に飲食やダンスをさせる営業の施設と書いています。手続きは原則として1つの演奏場所ごとで、契約名義人は店の経営者です。BGM以外の利用は書類での手続きで、JASRACのウェブサイトの申込書類請求フォームから書類を取り寄せます。
許諾の方法は、管理曲のすべてを契約の範囲内で使える包括許諾と、1曲1回ごとの曲別許諾から選べます。包括許諾には年額や月額の使用料が、曲別許諾には1曲1回の使用料が適用されます。客席面積が165平方メートル(50坪)までの店でカラオケの歌唱があり、年間の包括契約を結ぶ場合の月額は、当分の間、次のとおりと定められています。
| 客席面積 | 月額使用料(年間利用月額) |
|---|---|
| 33.0㎡(10坪)まで | 3,500円 |
| 33.0㎡を超え66.0㎡(20坪)まで | 7,500円 |
| 66.0㎡を超え165.0㎡(50坪)まで | 12,000円 |
金額には消費税相当額が加算されます。客席面積には、客が飲食や歌唱をするための場所と通路が含まれます。この表にあてはまらない場合は、座席数と標準単位料金(客1人あたりが通常支払う税引き後の料金に相当する額)で使用料が決まります。バーやスナックなどの区分で、特別の舞台を設けて司会者のもとで客に歌を競わせるような使い方をする場合は、この表ではなく別の表が使われます。生演奏や映像の上映をあわせて行うと計算が変わるので、自分の店の使い方でいくらになるかは、JASRACの担当支部に確認してください。
カラオケは、勧め方によって風営法の許可の種類にも関わります。深夜営業での扱いはスナック開業の許可一覧に、客と一緒に歌うことが接待にあたるかはガールズバー開業の許可一覧で整理しています。
BGMの手続きは、有線放送や市販のCDなど音源の流し方で変わる
BGMは、何から音を出しているかで手続きが分かれます。JASRACの案内を整理すると次のようになります。
| BGMの流し方 | JASRACの案内 |
|---|---|
| 有線音楽放送など、JASRACと契約した音源提供事業者の音源 | 事業者が店に代わって使用料を払う。有線とCDを両方流す場合も店の個別の手続きは不要 |
| 市販のCDやインターネット配信の音源をそのまま再生 | 店の手続きが必要。BGMのみの利用はオンライン申請ができる |
| 音源をCD-R、携帯音楽プレイヤー、スマートフォンなど別の媒体にコピーして流す | BGMの手続きに加えて複製の許諾が必要。著作隣接権(レコード会社等)の許諾が必要な場合もある |
| テレビやラジオの放送をそのまま流す | 手続き不要(第38条第3項)。インターネットラジオ、放送を録音して流す、家庭用受信装置以外を使う場合は原則として必要 |
| カラオケや生演奏ですでにJASRACと契約している | BGMの手続きは不要 |
有線を引いている店は、その事業者がJASRACの「利用許諾契約を締結している音源提供事業者一覧」に載っているかを確かめます。CDなどでBGMだけを流す店の使用料は、店舗面積で決まります。店舗面積500平方メートルまでの年額使用料は6,000円で、別途消費税相当額が加算されます。
音楽の聴き放題サービスをBGMにしたい場合は、先にサービスの利用規約を読みます。JASRACは、聴き放題サービスは個人的な利用に限定されている場合があるので、店のBGMとして使う前に各サービスの規約を確認するよう案内しています。JASRACへの申込みが済んでも、サービス側の規約で店での利用が認められていなければ使えません。
イベントで生演奏やDJを入れるときは、今の契約の範囲を確かめる
周年イベントや誕生日イベントで、バンドの生演奏や歌手の歌を入れる店もあります。JASRACの規程は、生演奏を「ピアノ、ギターなどの楽器を用いて行う演奏又は歌手などの歌唱」と定義し、カラオケ伴奏による歌唱とは分けています。録音物を使う演奏は「レコード演奏」として別に扱われます。DJのように音源をかける演奏がどれにあたるかは、使い方を説明してJASRACに確認します。
気をつけたいのは、ふだんの契約の範囲を超える使い方です。JASRACは、BGM契約の施設で生演奏をするなど利用方法を変える場合は担当支部へ連絡するよう求めています。BGMの契約では、BGM以外の方法で音楽は使えません。カラオケの契約だけの店が生演奏を入れる場合も、契約の範囲に入っているかを先に確かめます。
一度きりのイベントなら、曲別許諾を選ぶこともできます。この場合は、利用日の5日前までに利用許諾契約申込書と利用明細書を出します。店の外の会場を借りて開く場合は、JASRACの「コンサート・イベント等での演奏」の手続きを確認します。
生演奏やDJを入れると、ふだんより音も大きくなります。近隣への音漏れが心配なときは、騒音の苦情への対応で風営法の規制基準を確認しておきます。深夜に生演奏やDJで客を楽しませる営業に風営法の許可が要るかは、特定遊興飲食店営業の許可で確認できます。
店内の動画をSNSに投稿するとき、音楽の手続きはどうなるか
店内の動画をSNSに投稿して、店の雰囲気を伝える店もあります。動画をインターネットに載せるのは、店での演奏とは別の「公衆送信」という利用で、第23条の権利が働きます。第38条第1項の非営利の例外も、公衆送信には使えません。
JASRACは、JASRACと利用許諾契約を結んでいる動画投稿サービスであれば、一定の範囲内でJASRAC管理楽曲を含む動画を投稿者が手続きなしで投稿できると説明しています。ただし、次の場合は個別の手続きが必要になるとしています。
- 特定の企業や商品、サービスを宣伝する動画を投稿する場合は「広告目的複製」の手続きが必要(ライブ配信・生配信のみの場合は不要)
- 市販のCDやダウンロードした音源を使う場合は、著作隣接権について音源製作者(レコード会社等)の許諾が必要
- 自ら主催するコンサート等の模様を投稿する場合は、「演奏」に関する手続きが必要
店の集客のための動画は、宣伝にあたるかを考える必要があります。サービスの中で使える楽曲や、その利用条件は、サービスごとの規約で決まっています。JASRACの案内でも、投稿するアカウントが個人か企業・団体等かで手続きが変わる場合があります。投稿する前に、使うサービスの規約と、JASRACが公開しているUGCサービスの一覧を確認してください。
許諾なしで音楽を使い続けた場合の罰則と民事上の責任
著作権を侵害した者は、10年以下の拘禁刑か1,000万円以下の罰金に処され、両方が科されることもあります(第119条第1項)。この罪は、原則として告訴がなければ公訴を提起できません(第123条)。
法人の代表者や従業者が店の業務に関して侵害したときは、行為者を罰するほか、法人にも3億円以下の罰金が科されます(第124条第1項第1号)。個人経営の店なら、経営者本人に第119条に定める罰金刑が科されます。
刑事罰とは別に、民事の責任もあります。最高裁の判決は、許諾なく客やホステス等に歌わせた店の経営者に、演奏権侵害の不法行為責任を認めたものでした。カラオケを置いたまま手続きをしていない店は、開店時からの分をどう扱うかも含めて、早めにJASRACの担当支部へ相談してください。
今日できる確認
- カラオケがある場合、通信カラオケの会社との契約とは別に、JASRACとの契約(契約名義人は店の経営者)があるか
- BGMの音源が何か、有線ならJASRACの音源提供事業者一覧に載っているか、CDや配信なら店の手続きをしているか
- 聴き放題サービスをBGMにしていないか。しているなら、規約で店での利用が認められているか
- 周年イベントで生演奏やDJを入れる予定があるか。今の契約の範囲に入るかを担当支部に確認したか
- 店のSNSに載せている動画の音楽が、サービスの規約とJASRACの案内の範囲に収まっているか
出典
- 著作権法(e-Gov法令検索。第2条第1項第16号・第5項・第7項が演奏と公衆の定義、第22条が上演権・演奏権、第23条が公衆送信権、第38条が営利を目的としない上演等、第119条が罰則、第123条が告訴、第124条が両罰規定、附則第14条は削除)
- 最高裁判所第三小法廷 昭和63年3月15日判決 昭和59(オ)1204 音楽著作権侵害差止等請求事件(裁判所ウェブサイトの裁判例情報。カラオケ装置を置いたスナック等の経営者を客の歌唱の主体とし、演奏権侵害の不法行為責任を認めた)
- 文化庁「著作権テキスト 令和8年度版」(PDF。演奏権が録音物の再生にも働くこと、第38条の条件、「営利」「料金」の意味)
- 文化庁「著作権に関するお問い合わせ先」(著作権全般の問い合わせ先として著作権情報センターを案内)
- JASRAC「各種営業施設・教室等での演奏・上映」(手続きの流れ、包括許諾と曲別許諾、利用方法を変えるときの連絡)
- JASRAC「飲食を提供する施設や宿泊施設、結婚式場などでのカラオケ、楽器演奏」(PDF。使用料規程「社交場における演奏等」の区分、生演奏・レコード演奏の定義、カラオケの月額使用料、曲別許諾の提出期限)
- JASRAC「業務用通信カラオケと店舗でのカラオケ歌唱」(通信カラオケ事業者と店舗経営者の手続きの分担)
- JASRAC「各種施設でのBGM」(PDF。BGMの使用料、手続きが不要になる利用、別媒体へのコピー)と「BGMオンライン申請」(聴き放題サービスの規約確認、著作隣接権)
- JASRAC「YouTubeなどの動画投稿(共有)サービスでの音楽利用」(手続きなしで投稿できる範囲、広告目的の動画、市販CDの音源)
※2026年9月24日に上記資料を確認しました。自分の店の音楽の使い方にどの手続きと使用料が当てはまるかはJASRACの担当支部へ、法律の解釈は著作権情報センターの著作権相談か弁護士へ確認してください。






