
この記事の要点
- 風営法第15条は、店の周辺で、都道府県の条例で定める数値以上の騒音・振動(客やスタッフの声を含む)を出さないよう求めている。深夜に営業する飲食店にも、深夜の営業について準用される(法第32条第2項)
- 東京都の条例は、用途地域と時間帯で騒音の数値を決めている。商業地域などでも午前0時から午前6時は50デシベル、振動は都内全域で55デシベル。測るのは営業所の境界線の外側の直近の位置
- 条例で認められた時間まで午前0時以降も営業する風俗営業の店は、苦情処理の帳簿を備えて3年間保存する。違反が続けば、指示、営業停止の対象になる
営業中に、近所の人が店に来て「うるさい」と言っていった。管理会社や警察を通して苦情が届くこともあります。カラオケの音なのか、入口での見送りの声なのか、店の側でも原因がすぐには分かりません。
夜に営業する店の騒音には、風営法の決まりがあります。この記事では、風営法の騒音・振動の規制と東京都の数値、測り方、苦情の記録、処分までを条文で確認します。風俗営業の許可を受けた店と、深夜に営業するバーやガールズバーの両方が対象です。
風営法が規制するのは店内ではなく、営業所の周辺に漏れる音
騒音と振動の規制は、風営法第15条にあります。
風俗営業者は、営業所周辺において、政令で定めるところにより、都道府県の条例で定める数値以上の騒音又は振動(人声その他その営業活動に伴う騒音又は振動に限る。)が生じないように、その営業を営まなければならない。
風営法 第15条
対象は店の中ではなく「営業所周辺」の音です。数値は国ではなく、都道府県の条例で決まります。
もう1つの点は、音楽やカラオケだけでなく「人声」も入ることです。客が大声で話す声や、スタッフが入口で客を見送る声も、営業に伴う騒音として数えられます。
条例の数値には、国の上限があります。施行令第11条は、地域と時間帯ごとに、条例はこの数値を超えない範囲で定めるとしています。たとえば商業の集まる地域の深夜は55デシベルが上限です。都道府県はその範囲内で自分の数値を決めます。東京都の数値が、ほかの道府県でもそのまま使えるわけではありません。
深夜営業のバーやガールズバーにも、同じ騒音規制がかかるのか
第15条は、風俗営業の店だけの決まりではありません。風営法第32条第2項は、第15条を「深夜において飲食店営業を営む者」に準用し、「その営業」を「その深夜における営業」と読み替えています。
深夜は午前0時から午前6時までです(法第13条第1項)。深夜酒類提供飲食店営業の届出で営業しているバーやガールズバーは、この時間帯の営業について騒音・振動の数値を守る必要があります。届出の手順は深夜酒類提供飲食店営業の届出の手順にまとめました。
店の種類ごとにかかる決まりを並べると、次のようになります。
| 決まり | 風俗営業の許可を受けた店(キャバクラ、ラウンジなど接待をする店) | 深夜に営業する飲食店(届出をしたバー、ガールズバーなど) |
|---|---|---|
| 騒音・振動の数値 | 営業しているあいだ(法第15条) | 午前0時から午前6時の営業について(法第32条第2項) |
| 防音の構造・設備 | 許可の技術上の基準に入っていて、維持する義務がある(施行規則第7条、法第12条) | 深夜営業の技術上の基準に入っていて、維持する義務がある(施行規則第99条第6号、法第32条第1項) |
| 迷惑防止の措置と苦情処理帳簿 | 条例で認められた延長時間に営業するとき(法第13条第3項・第4項) | 第32条の準用の対象に入っていない |
| 違反したときの処分 | 指示、6月以内の営業停止、許可の取消し(法第25条・第26条) | 指示、6月以内の営業停止(法第34条) |
用途地域と時間帯で変わる、東京都の騒音・振動の基準値
東京都の数値は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例の第6条にあります。第15条を準用する深夜の飲食店営業にも、同じ表を使うと定めています。
| 地域(都市計画法の用途地域など) | 午前6時〜午前8時 | 午前8時〜午後6時 | 午後6時〜午前0時 | 午前0時〜午前6時 |
|---|---|---|---|---|
| 第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種文教地区 | 40デシベル | 45デシベル | 40デシベル | 40デシベル |
| 第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域、無指定地域 | 45デシベル | 50デシベル | 45デシベル | 45デシベル |
| 近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域 | 50デシベル | 60デシベル | 50デシベル | 50デシベル |
2段目と3段目は、第一種文教地区にあたる部分を除きます。振動は、都内全域で55デシベルです(同条第2項)。
夜の店が営業する時間帯は、どの地域でも昼より数値が低くなっています。繁華街の商業地域でも、午後6時から翌朝6時までは50デシベルです。深夜に営業する飲食店が守るのは、表のいちばん右の列です。
自分の店がどの用途地域にあるかは、東京都都市整備局の都市計画情報で調べられます。東京都以外で営業している店は、その道府県の条例で数値を確かめてください。
騒音や振動を測る場所と測り方は、施行規則が決めている
騒音と振動の測り方は、施行令第11条第3項が国家公安委員会規則に委ね、施行規則第32条が定めています。
騒音は、営業所の境界線の外側で測定可能な直近の位置で測ります。計量法第71条の条件に合格した騒音計を使い、日本産業規格Z8731の騒音レベルの測定方法によります。A特性と速い動特性を使い、5秒以内の一定の間隔で50個以上測った値の5パーセント時間率騒音レベルを数値とします。
振動は、営業所の境界線の外側で測定可能な直近の床か地面で、振動レベル計を使って測ります。5秒間隔・100個などの測定値の80パーセントレンジの上端値が数値です。
法令が見るのは、決められた機器と方法で測った値です。店で手元の機器を使って測った数字は、この方法で測った値ではないので、目安にとどまります。
防音は、営業を始める前の基準にも入っています。許可や深夜営業の技術上の基準には、騒音・振動が条例の数値に満たないよう維持するために必要な構造・設備を持つことが含まれます。警察庁の解釈運用基準は、風俗営業の許可の基準について、音が条例の数値に達する場合は防音設備が必要で、音響設備がなく騒音が出ない場合や、壁の厚さや境界までの距離で外に音が漏れない場合にまで、設置を義務付けるものではないと説明しています。
午前0時を過ぎて営業する風俗営業の店には、苦情処理帳簿が必要
風俗営業の店は、原則として午前0時から午前6時まで営業できません。例外は、条例で定めた地域・日に、条例で定める時まで営業する場合です(法第13条第1項)。東京都では、公安委員会が告示する営業延長許容地域では午前1時まで、年末年始の12月10日から1月7日などの特別な日も原則として午前1時までです。営業時間の決まりは風営法の営業時間にまとめています。
この延長時間に営業する店には、2つの義務がかかります。1つは、客が大声や騒音を出したり、酔って乱暴な言動をしたりして周辺に迷惑をかけないようにする措置です(法第13条第3項)。施行規則第27条は、迷惑をかけないよう求める書面の掲示か交付、口頭か音声での案内、泥酔した客に酒を出さないこと、店内と周辺の定期的な巡視、迷惑をかけている客へのやめるよう求める声かけを挙げています。従業員への教育も必要です。
もう1つが、苦情の処理に関する帳簿です(法第13条第4項)。書く項目は、施行規則第28条が決めています。
法第十三条第四項に規定する苦情の処理に関する帳簿には、次に掲げる事項を記載するものとする。 一 苦情を申し出た者の氏名及び連絡先(氏名又は連絡先が明らかでない場合は、その旨)並びに苦情の内容 二 原因究明の結果 三 苦情に対する弁明の内容 四 改善措置 五 苦情処理を担当した者
風営法施行規則 第28条第1項
帳簿は、最後に記載した日から3年間保存します(同条第2項)。パソコンなどに記録して、すぐに画面に表示できる形なら、帳簿の代わりにできます(施行規則第29条)。
延長営業をしない店に、この帳簿の義務はありません。ただ、風俗営業の管理者の業務には、営業所の業務に関する苦情の処理が入っています(施行規則第38条第5号)。苦情を受けたら、義務のあるなしにかかわらず、この5項目で書き残しておくと、あとで何をしたかを説明できます。 管理者の記録が立入で見られることは、警察の立入で何を見られるのかに書きました。
近隣から苦情を受けたときの記録と、原因を確かめる手順
苦情を受けたときの手順は、帳簿の項目の順に沿って進めると漏れがありません。
最初に、受けた人がその場で記録します。いつ、誰から、どんな音について言われたか。相手が名前や連絡先を言わなければ、分からないことをそのまま書きます。受けた人が店長でなければ、その日のうちに管理者に伝えます。
次に、原因を特定します。店の中の音楽やカラオケか、客の話し声か、入口の開け閉めのたびに漏れる音か、店の前での見送りや立ち話か。苦情が来た時刻にどの席で何をしていたかを、シフトと照らして確かめます。振動の苦情なら、床に置いたスピーカーや低い音が伝わっていないかを見ます。
そのうえで、対策を決めます。音量を下げる、扉や窓を閉める、見送りを店内で済ませる、店の前で話し込む客に声をかける、といった店の運用で変えられることから手をつけます。午前0時以降に営業する店は、施行規則第27条の措置がそのまま対策の項目になります。風俗営業の店は、東京都の条例第7条第8号で、店の周辺に客が捨てたごみや吐いたものを放置しない決まりもあるので、音と一緒に確認します。
防音の工事が必要になったら、手続きに注意します。風俗営業の店が営業所の構造や設備を変えるときは、内閣府令で定める軽微な変更を除いて、あらかじめ公安委員会の承認を受けなければなりません(法第9条第1項)。工事の前に管轄の警察署に相談してください。許可後の手続きは許可後に続く手続きにまとめました。
最後に、何をしたかを相手に伝え、帳簿の「弁明の内容」「改善措置」「担当した者」まで書いて閉じます。同じ相手から繰り返し苦情が来るなら、前回の記録を見返して、対策が効いていたかを確かめます。
苦情を放置して違反が続くと、指示処分や営業停止命令につながる
第15条の違反そのものは、罰則の条文(第49条以下)に挙げられていません。問題になるのは、公安委員会の行政処分です。
風俗営業の店が法令や条例に違反し、清浄な風俗環境を害するおそれがあると認められると、公安委員会は必要な指示をすることができます(法第25条)。違反によって著しく善良の風俗や清浄な風俗環境を害するおそれがあると認められる場合や、指示などの処分に従わなかった場合は、許可の取消しか、6月を超えない範囲の営業停止を命じることができます(法第26条第1項)。深夜に営業する飲食店も、指示と6月以内の営業停止の対象です(法第34条)。
営業停止の命令に違反すると、刑事罰があります。風俗営業の店は5年以下の拘禁刑か1,000万円以下の罰金(併科あり、法第49条第4号)、深夜の飲食店営業は2年以下の拘禁刑か200万円以下の罰金(併科あり、法第50条第3号)です。
風営法とは別に確認しておきたい、東京都の環境確保条例
東京都では、風営法とは別に、環境確保条例(都民の健康と安全を確保する環境に関する条例)も夜の飲食店の音を規制しています。東京都環境局の説明によると、飲食店営業を営む者は、午後11時から翌日午前6時まで、カラオケ装置や楽器などの音響機器を営業場所で使ったり使わせたりしてはいけません(条例第131条)。防音で音が外に漏れない場合などは除かれます。店でカラオケを使うときの著作権の手続きは、店のカラオケやBGMの著作権で確認できます。
同じ時間帯に、住居系の用途地域とその周囲20メートル以内では、飲食店営業に伴う騒音を、敷地の境界線で条例の規制基準以下に抑える決まりもあります(条例第132条)。こちらは風営法の許可や届出とは別の決まりで、対象は食品衛生法施行令に定める飲食店営業です。
苦情の相談先は、音の種類によって分かれます。風営法の規制は管轄の警察署です。環境確保条例の規制は、東京都環境局が区市町村の環境担当窓口を案内しています。各都道府県には、風俗環境に関する苦情を処理する事業を行う都道府県風俗環境浄化協会もあります(法第39条第2項第1号)。
今日できる確認
- 店のある場所の用途地域と、東京都の条例(または自分の道府県の条例)で決まっている騒音の数値
- 深夜に営業する飲食店なら、午前0時以降の営業が騒音の規制の対象になることを、スタッフが知っているか
- 苦情を受けたときに、誰が、どの項目で記録するかが決まっているか
- 入口の見送りや店の前での立ち話など、店の外で声が出る場面がどこにあるか
- 午前0時以降に営業する風俗営業の店なら、苦情処理の帳簿を備え、3年間保存しているか
出典
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(e-Gov法令検索。第9条が構造・設備の変更の承認、第12条が構造・設備の維持、第13条が営業時間と延長営業時の措置・苦情処理帳簿、第15条が騒音・振動の規制、第25条・第26条・第34条が処分、第32条が深夜の飲食店営業への準用、第39条が風俗環境浄化協会、第49条・第50条が罰則)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令(e-Gov法令検索。第11条が騒音・振動の条例の基準と上限、第26条が深夜の飲食店営業の基準)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則(e-Gov法令検索。第7条・第99条が構造・設備の技術上の基準、第27条が延長営業時の措置、第28条・第29条が苦情処理帳簿、第32条が騒音・振動の測定方法、第38条が管理者の業務)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(東京都例規集。第4条の2・第4条の3が営業延長、第6条が騒音・振動の数値、第7条が風俗営業者の遵守事項)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例の施行に関する規則(東京都例規集。第3条が年末年始などの特別な日、第5条・第6条が営業延長許容地域と延長の時刻)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について(通達)(警察庁・令和8年7月1日・PDF。第12の8(4)が防音設備の考え方、第17の4が騒音・振動の規制の趣旨)
- 東京都環境局「音響機器等の使用制限」(環境確保条例第131条による深夜の音響機器の使用制限)
- 東京都環境局「深夜の営業等の制限」(環境確保条例第132条による深夜営業の騒音の規制)
※2026年9月24日に上記資料を確認しました。自分の店の所在地の用途地域や数値、延長営業の可否、防音工事に承認が要るかは管轄の警察署へ、環境確保条例の規制は区市町村の環境担当窓口へ確認してください。






